ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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3 入学式

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突然の爆弾宣言に、その場に立ち上がる者、隣同士で抱き合い泣き出す者・・・
講堂に大混乱を与えた当の本人は、それを黙って見下ろしていたが。
途中でなにかに気付き、ヒラヒラ優雅に手を振る。
ヒラヒラ手を振られた人間は、それどころではなさそうだ。

明らかに、茅野が手を振っているのは教師列に唯一残っている田栗先生にむけて。
その周りに人はいないから間違いはない。

田栗先生は、深く腰かけていた椅子の上で仰け反ったせいで、傾いた椅子から落ちそうなくらい動揺している。
パクパク、魚のように口は開閉を繰り返すが言葉は出てこず、そのまま床に尻餅をついた。
適当でダラダラしている田栗先生が、こんなに余裕をなくしているのは珍しいんじゃないか?


「愛しき花たちを、予想以上に驚かせてしまったようで申し訳ないが・・・本日誕生日を迎えたので、午後から入籍も済ませるつもりだ。
明日から、田栗 誉(たぐり ほまれ)となるのでよろしく」


茅野は幸せを滲ませる微笑みで一礼すると、その場から降りてしまう。
新入生の中央に設けられた通路に足が向いた辺りから、じわじわとその言葉の意味が浸透し始めた。

誕生日、入籍、田栗・・・

αなら、18歳でしか許されない入籍が出来る意味。
歩いていく茅野が、先程手を振った相手の名前。

気がつくのは、田栗先生の名前を既に知っている上級生が早かった。
一斉にその姿を探して教師列に視線が集中。
だが、田栗先生の行動は一足早く。
パイプ椅子をひっくり返し、その姿を消していた。
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