可愛いΩのナカセカタ

三日月

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番外編

酒の肴 2

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 シールとペンをさっさと青嵐から受け取ったが、青嵐はその場で姿勢を崩すこともなく固まったまま動けないでいる。
 俺は、ギュウギュウ熱烈に抱き締めてくる由良の後ろ襟を持って引き剥がした。由良は、離されたショックがよっぽど大きかったらしい。無言で見開いた瞳から、ボロボロと大粒の涙を溢していたので頬に流れた涙を舌ですくってやる。


「由良、ほら、名前書くんだろ?」


 頬にキスを落とし、優しくあやしながら微笑むと由良の頬が瞬時に染まった。


「んふふっ、疾風はぁ、格好良いれすねぇ~」


 由良は泣いていたことを忘れ、うっとりと顔を眺めてくる。ふわりふわりと幸せそうに笑っている由良は、気持ちがストレートに出ているからか印象があどけない。
 全身から、求愛フェロモンが滲み出していた。


「由良は可愛いよ」


 そのまま言葉にすると、普段なら「そんなことはない」「からかうな」と照れるのにニヘラと嬉しそうに笑っている。機嫌が良くなった由良にシールとペンを持たせ、床に座って名前を書くように促す。
 由良は、直ぐには頭が回らないらしく、ユラユラと身体を揺らしながら手に持ったペンとテーブルの上のシールとを見比べ頭を捻っている。

 この隙に、さっさと運ぶか。

 由良に気づかれないよう立ち上がり、こども部屋に割り当てている部屋で布団を敷いて戻ってくると四人は撃沈。プスープスーと鼻水で鼻を詰まらせながら、風音は床で寝転がったまま大の字で寝ていて、凪と風花は器用にずれた椅子とテーブルの隙間に重なるように寝ていて。青嵐は正座の姿勢で寝落ちしていた。
 由良が用意した飯がほとんど残っているテーブルを取り囲むようにそれぞれ寝息をたてている。

 運んでいる途中で起きないよう、安心させるために身を守るフェロモンで包み込み、両腕に抱えて布団まで運ぶ。フェロモンで包んだ途端、ストンと意識が一段深い場所まで沈んだのが身体の重みでもわかった。
 由良は、俺が子どもを運んでいることには全く気付かず「んー、自分の名前はぁ、由良ですよー」と呟きながら名前をゆっくりと書いている。由良は酔っぱらってから、子どもに意識が全く向いてなかったな。まるで俺と由良しかいないように意識が狭まっているのか?
 酔うと手元も狂うらしい。戻ってきたら、何枚もシールを突き抜けてテーブルに線が伸びていた。
 
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