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番外編
酒の肴 1
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「疾風、疾風ぇっ
疾風は、自分のじゃないんれすかぁーーーっ」
グジグジ泣きながら、俺の首に抱きついて離れない由良に目を細める。たった一杯、いや、グラスの半分も飲んでいない発泡酒で由良はグダグダの酔っ払いに陥っている。普段の穏和な由良に比べると、別人のように感情が振りきれていて面白い。
「由良のだろ?」
よしよしと、まるで子どものような癇癪を起こしている由良の後頭部を撫でながら、ギャンギャン泣いている子ども四人にも目をやるが・・・風音は椅子から落ち、床でひっくり返りながら顔を真っ赤にさせて暴れているし、青嵐は机の下に潜り込んで震えているし、凪と風花は椅子に座ったまま抱き合って大泣きだ。
「名前が無いんれすぅーーーっ」
由良は頭を頬に押し付けるようにグリグリ回してくる。名前、名前ねぇ。凪と風花の入学式に向けて、由良が何かと買いそろえて名前を書いていたな。そっから飛んできてるのか?
由良を抱きつかせたまま、潜っている青嵐に命じる。
「青嵐、今すぐ名前が書いてないネームシールのシートを一枚と黒の油性ペン持ってこい」
「っっ」
テーブルの下で体をすくませた青嵐が、脱兎の如く四つ足で這って飛び出していった。由良の酔っ払いぶりが面白いので気分も良いし、そこまでキツく命じてはいないんだが・・・その横顔は、真っ白で怯えきっていた。
青嵐を含め、コイツらは由良が泣いているこの状況がよっぽどヤバイと思っているんだろう。まぁ、それくらいコイツらの中に由良を泣かせればどうなるか刻み込まれてるってことなら良いか。
残った子ども三人の泣き声が鬱陶しいとは思うが、すでに風音は泣きつかれてグズリながら寝始めている。わざわざ俺が黙らせなくても、凪も風花もそのうち寝るな。
「と、と、ととぉっっ」
震える両手でシールとペンを頭の上に掲げるように持ってきた青嵐は、舌が回っていない。どうやら「取ってきた」と言いたいらしいが、俺が手を伸ばせばギリギリ届く場所で正座。顔をあげることも出来ないくらいに緊張しているようだ。
だが、この青嵐の怯えっぷりは見慣れている。これだけ怯えていても、次の日にはケロッと忘れて同じことをするからな。バカなのか、打たれ強いのか。由良がなんでもかんでも誉めるせいか、怒られたことより誉められたことしか頭に刻まれていないのか?
疾風は、自分のじゃないんれすかぁーーーっ」
グジグジ泣きながら、俺の首に抱きついて離れない由良に目を細める。たった一杯、いや、グラスの半分も飲んでいない発泡酒で由良はグダグダの酔っ払いに陥っている。普段の穏和な由良に比べると、別人のように感情が振りきれていて面白い。
「由良のだろ?」
よしよしと、まるで子どものような癇癪を起こしている由良の後頭部を撫でながら、ギャンギャン泣いている子ども四人にも目をやるが・・・風音は椅子から落ち、床でひっくり返りながら顔を真っ赤にさせて暴れているし、青嵐は机の下に潜り込んで震えているし、凪と風花は椅子に座ったまま抱き合って大泣きだ。
「名前が無いんれすぅーーーっ」
由良は頭を頬に押し付けるようにグリグリ回してくる。名前、名前ねぇ。凪と風花の入学式に向けて、由良が何かと買いそろえて名前を書いていたな。そっから飛んできてるのか?
由良を抱きつかせたまま、潜っている青嵐に命じる。
「青嵐、今すぐ名前が書いてないネームシールのシートを一枚と黒の油性ペン持ってこい」
「っっ」
テーブルの下で体をすくませた青嵐が、脱兎の如く四つ足で這って飛び出していった。由良の酔っ払いぶりが面白いので気分も良いし、そこまでキツく命じてはいないんだが・・・その横顔は、真っ白で怯えきっていた。
青嵐を含め、コイツらは由良が泣いているこの状況がよっぽどヤバイと思っているんだろう。まぁ、それくらいコイツらの中に由良を泣かせればどうなるか刻み込まれてるってことなら良いか。
残った子ども三人の泣き声が鬱陶しいとは思うが、すでに風音は泣きつかれてグズリながら寝始めている。わざわざ俺が黙らせなくても、凪も風花もそのうち寝るな。
「と、と、ととぉっっ」
震える両手でシールとペンを頭の上に掲げるように持ってきた青嵐は、舌が回っていない。どうやら「取ってきた」と言いたいらしいが、俺が手を伸ばせばギリギリ届く場所で正座。顔をあげることも出来ないくらいに緊張しているようだ。
だが、この青嵐の怯えっぷりは見慣れている。これだけ怯えていても、次の日にはケロッと忘れて同じことをするからな。バカなのか、打たれ強いのか。由良がなんでもかんでも誉めるせいか、怒られたことより誉められたことしか頭に刻まれていないのか?
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