可愛いΩのナカセカタ

番外編

お酒に御用心 １６

「すみません、いつもあぁなので」


　目の前で見せつけられている雪さんと嵐の前に、由良特製の白身魚のパイ包みとローストビーフを置き、ついでに隣に座って空になっていた雪さんのグラスに瓶ビールを注いだ。まぁ、その内嫌でも慣れますから。慣れないと、この家には入れませんよ。


「うぇ、マジで？！・・・じゃ、なかった、マジですか・・・」


　気を使って言い直した雪さんに、真顔で頷く。


「マジです」


　お酒を飲んでいるからここまで表面化してますが、結局のところ由良が疾風様を好きなことは普段の行動、仕草や表情でも筒抜けですからね。
　雪さんは感心半分、呆れ半分の相槌を打ちながら入れたばかりのグラスを空にする。来て早々に、由良や風音からも注がれてましたし結構飲んでいるのにまるで初めの一杯のような飲みっぷり。顔色ひとつ変えない雪さんは、ザルのようですね。
　次もビールで良いか確認して足そうとすると、返杯を勧められペットボトルのウーロン茶を使っていたグラスに注いで貰いました。


「まぁ、仲良さそうッスよね」


　目のやり場に困り、こちらを向いたままの雪さん。なんだか他人事みたいな言い方ですね？


「そうですねぇ。
　雪さんも、嵐と末長く"仲良く"してやってください」

「ブハッッ」


　含みを持たせた言い方をすると、雪さんは飲んでいたビールを吹き出した。咄嗟に顔を下に向けてましたが、僕の服にまでかかってますよ・・・まぁ、今回は僕から仕掛けたことですからね。怒らずに、ハンカチを先に渡そうとしたら嵐の方が早かったようです。
　ハンカチを差し出して世話を焼いてますが、雪さんには恥ずかしがられてますよ。まだまだですかねぇ。嵐に睨まれましたが、気付かないふり。兄妹初の番誕生なんですから、祝わせてくださいよ。