可愛いΩのナカセカタ

番外編

理想の番は ７

　ブルッ！想像しただけで震えるわっ！

　萩野合宿は、命のやり取りも含む家業のせいか容赦ない。身体を鍛えてんのか、痛めてんのか、限界ギリギリまで追い込むスパルタ式。確かに、強くはなるけどさ。普段、萩野レベルの強さなんて必要ないし。そんなことしなくても、俺達、そこそこ強いし。
　強さをなんか極めたがってる風音は、全然苦にならないみたいだが俺は参加したくない。連帯責任で放り込まれると、最初は元凶作ったヤツにイライラしてんだけど。終わる頃には、そんな気力残ってない。あぁ、無事に帰れるって嬉しさが先だって誰のせいだったかとかどうでもよくなる。

　親父最大の我が儘は、由良を泣かせて良いのは自分だけって限定してることだよな。「嬉し涙は許してやる」って言われたときは本気で呆れた。
　それを宣言された時、幼心にどんだけ由良を独占したいんだと開いた口が塞がらなかった。まぁ、その場で口には出さなかったけど。出したら、照れ隠しの蹴りで頭吹っ飛ばされるのは幼稚園児にもわかったし。今だから手加減も板についてきた親父だが、俺が小さい頃は微妙だったからな。
　力を抜く加減が、ギリギリまで痛めつけることにしか発揮されなかったあの頃の暴君親父・・・力の格差に恐怖を植え付けられ、文字通りぶんまわされ、フェロモンにマウントされまくってたから寿命もかなり削られてると思う。生き延びてるけどさ。
　由良のこと、孕親っていうより命の恩人だと思ってる。Ωだけど尊敬してる。親父の番が由良で本当に良かったと、弟妹の中で一番実感しているのは間違いなくこの俺だねっ
　

「なぁ、何回も聞いてるけどさ。
　由良は、なんであの親父と番になったんだっけ？」


　その質問は、本当に何回目だろう。それなのに、洗っていた包丁をシンクに落とし狼狽える由良。毎回変わらぬ反応、リア充爆発しまくれ！って思うのに、番の話題になるとつい聞きたくなるんだよな。