可愛いΩのナカセカタ

282 α 現在

｢うわぁ、前倒ししてかなり作ったのに買って貰えたんだな｣


　「ありがたいなぁ」と呑気に呟きながら、由良はリストを眺めている。その手元を一緒に覗き、｢このへんのジャムとかヤバイ｣と言い添える青嵐(せいらん)。名前負けの小心者は、こちらを見ようともしない。俺が様子を見に来いと言わなくても、由良を頼るために毎日来るつもりだったんじゃないのか？
　由良が一人目だからと、何かと手を焼き世話を焼き甘やかしたせいだな。


｢あと、仙人じいさんが来て由良さんはいつ来るんだって言ってたぞ。
　新しく植える野菜のことを話したいって｣


　青嵐は、俺とは一切目を合わさず、由良に向かって話している。自分が由良に、仕事の話をすればするだけ墓穴を掘っていることには気付いているようだが。自分では、仕事を回しきれないから仕方ないと開き直っているのか？


｢そんな時期か。
　うん、青嵐も休んで良いと言ってくれていたけど忙しそうだしな。
　明日から普通に出るよ。
　まだ家も片付いてないし、ジャムにしても惣菜にしてもそっちで作るしかないし｣


・・・はぁああ？

　青嵐は、俺の顔がひきつったのを背中で感じたらしい。ビシッと身体を硬直させて息をのみ、由良の肘を指で摘まんでぎこちなく引っ張る。俺が苛立ったのを、由良にも教えようとしたらしい、が。