可愛いΩのナカセカタ

三日月

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 中学最後の春休みは、二人が寝ても余るベットの上で一日の殆どを過ごしている。由良が入れられたのは、特別病棟の最上階。VIP扱いで、家より広い。冷蔵庫にオーブン、テレビと家電、備え付けのクローゼットにソファー。ローテーブルの上に置かれた陶器には、華美な花まで生けてある。まるでホテルのようだ。俺の寝泊まりもあっさり許されたし、椿頭はこの病院と深い関わりがあるんだろう。
 日を追うごとに、由良の身体の何重にも巻かれた包帯が減っていき。麻酔が効いていなくても、深く眠れるようになった由良の寝顔にほっとしている。

 入院初日から一週間は、熱も上がり、痛みも酷いのかうなされっぱなしだったからな。痛み止めにも、胃腸を荒らす副作用があるし、飲まないに越したことはないんだが。由良の怪我は、整腸剤と合わせて飲んででも摂るべき状況らしい。
 まぁ、二日目に熱を出したのは、由良が慣れない薬を飲みたがらなかったのもあるが。

 顔から腫れが引いて、入院三日目でやっと目の包帯も外れた。包帯を外され、焦点の合わない目で俺を探し当てた由良は、笑っていた。あんなに酷い目にあったことも忘れたように。本当に、由良は強いな。
 この件に関しては、由良より俺の方が引きずっている。由良につけられた傷跡を見る度に、これをやったαを生かしている自分に苛立つ。あのとき、由良の声に耳を傾けず、砕いてしまえば良かった!

 だから


「由良、あ~ん」

「あ、あの、もう、自分で食べ・・・」


 ベッドに上半身だけ起こしている由良の口元に、朝食に配膳されたスープをスプーンですくい差し出す。なんとかかわそうと、おろおろしている由良。両手は肩の脱臼と捻挫くらいで、今は使えるようになったからな。使えなかった時より、抵抗してくる。


「由良?」


 だが、静かに名前を呼んだら観念したようだ。俺の圧力に、由良は真っ赤な顔でおずおず口を開けた。
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