235 / 461
232 α
しおりを挟む
りっちゃんが去ってから暫くして、白衣と背広の入り交じる大名行列を伴い椿頭家御一行が到着した。何でわかったかと言えば、こいつらがここに辿り着くまでに先行して走ってきた病院関係者が騒いでいたからだ。信号や踏み切りまで操作して、運び込まれた患者相手に椿頭家がわざわざ見舞い。病院中が、その歓待に回るのは当たり前か。
先頭のα、背広姿の由良の父親と目が合い長椅子から立ち上がって会釈。由良と顔立ちは全く似付かない、人を操るに長けた老獪さが滲み出ている。普段、俺が対峙するαにはない凄み。今はどこかの大臣の座におさまっていたな。次期総理大臣有力候補だったか。
それが、わざわざ縁を切った息子に自ら顔出しするとは思わなかった。俺と番になることを萩野家を通じて事前に知らせた時は、「好きにすれば良い」とあっさりした反応だったが。流石に怪我を負わされたとなれば、話は違ってくるらしい。
由良に事前に知らせると告げた時は、「勘当されているから」と寂しそうに話し、許可を取れても「そうか」とどこか諦めたような顔だったが・・・由良が考えている程、この男は由良を切り捨て切れていないようだ。
スッとその右手が上がっただけで、付き従っていた人間も、周りにいたスタッフも、無言で視界から立ち去りフロアには俺と二人しか残らない。
「初めまして、萩野 疾風です。
この度は、申し訳ありません」
「椿頭 敬二郎(つばきがしら けいじろう)だ。
由良の番、だな。
報告は受けている」
俺が恐れるような相手ではないが、代々権力を握ってきた椿頭家の力はαの世界で表でも裏でも浸透している。裏社会でしか知られていない萩野家とは、また違った位置にある家だ。その当主がここまで由良を気にしているのなら、あの石も返して終わりと言うわけではないだろう。
先頭のα、背広姿の由良の父親と目が合い長椅子から立ち上がって会釈。由良と顔立ちは全く似付かない、人を操るに長けた老獪さが滲み出ている。普段、俺が対峙するαにはない凄み。今はどこかの大臣の座におさまっていたな。次期総理大臣有力候補だったか。
それが、わざわざ縁を切った息子に自ら顔出しするとは思わなかった。俺と番になることを萩野家を通じて事前に知らせた時は、「好きにすれば良い」とあっさりした反応だったが。流石に怪我を負わされたとなれば、話は違ってくるらしい。
由良に事前に知らせると告げた時は、「勘当されているから」と寂しそうに話し、許可を取れても「そうか」とどこか諦めたような顔だったが・・・由良が考えている程、この男は由良を切り捨て切れていないようだ。
スッとその右手が上がっただけで、付き従っていた人間も、周りにいたスタッフも、無言で視界から立ち去りフロアには俺と二人しか残らない。
「初めまして、萩野 疾風です。
この度は、申し訳ありません」
「椿頭 敬二郎(つばきがしら けいじろう)だ。
由良の番、だな。
報告は受けている」
俺が恐れるような相手ではないが、代々権力を握ってきた椿頭家の力はαの世界で表でも裏でも浸透している。裏社会でしか知られていない萩野家とは、また違った位置にある家だ。その当主がここまで由良を気にしているのなら、あの石も返して終わりと言うわけではないだろう。
0
お気に入りに追加
709
あなたにおすすめの小説
【R18】孕まぬΩは皆の玩具【完結】
海林檎
BL
子宮はあるのに卵巣が存在しない。
発情期はあるのに妊娠ができない。
番を作ることさえ叶わない。
そんなΩとして生まれた少年の生活は
荒んだものでした。
親には疎まれ味方なんて居ない。
「子供できないとか発散にはちょうどいいじゃん」
少年達はそう言って玩具にしました。
誰も救えない
誰も救ってくれない
いっそ消えてしまった方が楽だ。
旧校舎の屋上に行った時に出会ったのは
「噂の玩具君だろ?」
陽キャの三年生でした。
上手に啼いて
紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。
■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
俺の番が変態で狂愛過ぎる
moca
BL
御曹司鬼畜ドSなα × 容姿平凡なツンデレ無意識ドMΩの鬼畜狂愛甘々調教オメガバースストーリー!!
ほぼエロです!!気をつけてください!!
※鬼畜・お漏らし・SM・首絞め・緊縛・拘束・寸止め・尿道責め・あなる責め・玩具・浣腸・スカ表現…等有かも!!
※オメガバース作品です!苦手な方ご注意下さい⚠️
初執筆なので、誤字脱字が多々だったり、色々話がおかしかったりと変かもしれません(><)温かい目で見守ってください◀
平凡顔のΩですが、何かご用でしょうか。
無糸
BL
Ωなのに顔は平凡、しかも表情の変化が乏しい俺。
そんな俺に番などできるわけ無いとそうそう諦めていたのだが、なんと超絶美系でお優しい旦那様と結婚できる事になった。
でも愛しては貰えて無いようなので、俺はこの気持ちを心に閉じ込めて置こうと思います。
___________________
異世界オメガバース、受け視点では異世界感ほとんど出ません(多分)
わりかし感想お待ちしてます。誰が好きとか
現在体調不良により休止中 2021/9月20日
最新話更新 2022/12月27日
鬼の騎士団長が淫紋をつけられて発情しまくりで困っているようなので、僕でよければ助けてあげますね?
狩野
BL
不本意に騎士団に入れられた遊び人貴族×淫紋をつけられた謹厳実直な騎士団長。
R18多めです。
【あらすじ】
ラトゥール王国の騎士団長カルナス・レオンダルは若くして騎士団長に任命され、その強さと周囲への厳しさから"鬼"と呼ばれていた。政治的圧力で加入を認めざるをえなかった名目だけの副団長、大貴族の放蕩息子であるシルヴァリエ・アンドリアーノとは犬猿の仲だ。
ある任務で淫紋をつけられてしまったカルナスは、突然やってくる発情に苦しむようになる。必死にそれを隠そうとするも、かえってそれが"淫紋"を育てる結果になってしまった。偶然それを発見したシルヴァリエは、淫紋の力を弱めるためという名目でカルナスと関係を持つようになる。それまでの意趣返しとばかり強引な行為をしかけていたシルヴァリエだが、徐々にカルナスに特別な感情を抱くようになり……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる