可愛いΩのナカセカタ

三日月

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 りっちゃんが去ってから暫くして、白衣と背広の入り交じる大名行列を伴い椿頭家御一行が到着した。何でわかったかと言えば、こいつらがここに辿り着くまでに先行して走ってきた病院関係者が騒いでいたからだ。信号や踏み切りまで操作して、運び込まれた患者相手に椿頭家がわざわざ見舞い。病院中が、その歓待に回るのは当たり前か。

 先頭のα、背広姿の由良の父親と目が合い長椅子から立ち上がって会釈。由良と顔立ちは全く似付かない、人を操るに長けた老獪さが滲み出ている。普段、俺が対峙するαにはない凄み。今はどこかの大臣の座におさまっていたな。次期総理大臣有力候補だったか。
 それが、わざわざ縁を切った息子に自ら顔出しするとは思わなかった。俺と番になることを萩野家を通じて事前に知らせた時は、「好きにすれば良い」とあっさりした反応だったが。流石に怪我を負わされたとなれば、話は違ってくるらしい。

 由良に事前に知らせると告げた時は、「勘当されているから」と寂しそうに話し、許可を取れても「そうか」とどこか諦めたような顔だったが・・・由良が考えている程、この男は由良を切り捨て切れていないようだ。

 スッとその右手が上がっただけで、付き従っていた人間も、周りにいたスタッフも、無言で視界から立ち去りフロアには俺と二人しか残らない。


「初めまして、萩野 疾風です。
 この度は、申し訳ありません」

「椿頭 敬二郎(つばきがしら けいじろう)だ。
 由良の番、だな。
 報告は受けている」


 俺が恐れるような相手ではないが、代々権力を握ってきた椿頭家の力はαの世界で表でも裏でも浸透している。裏社会でしか知られていない萩野家とは、また違った位置にある家だ。その当主がここまで由良を気にしているのなら、あの石も返して終わりと言うわけではないだろう。
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