可愛いΩのナカセカタ

183 Ω

｢由良ちゃんがARTSに顔出したって情報が入ったから、わざわざ迎えに行ったんだよ？
　俺が専属になるって言っても断ってたのにさ。
　急にアングラから消えちゃうし、いくら聞いても居場所教えてくれないしさぁ｣　　


　嗤いながら話し掛けて来た芹沢の眉間に皺が寄る。突如激昂する性格と過剰な暴力。それが芹沢、だった。
　来るとわかっていても、自由が効かない自分には成す術がなかった。左頬を振り上げられた拳で殴られ、悲鳴を殺す。一度目の覚醒では着けていなかった開口固定の拘束具のせいで、口が閉じれず歯がぐらついた。身体の麻痺は解けていたが、四肢の自由は芹沢が好んだ斜め十字の柱に革紐で固定され逃げ場がない。振り子の要領で戻った顔を、もう一度今度は右の甲で殴られる。

　痛みで立ち眩みを起こす自分の目の前で、芹沢はわざと長く尖った爪を見せびらかした。見覚えがある。確か、この爪は特殊加工。アンダーグラウンドでは使用を禁じられ、｢由良ちゃんのためにわざわざ手入れさせたのに｣と苛立っていたのを思い出す。
　特殊なコーティングで硬質化したそれは、簡単に肉を裂く、とか。