可愛いΩのナカセカタ

41 Ω

　それからも暴君は、発情期が近づくと先回りして抑制剤を渡してくれた。その度に、自分は金で買われた立場なのだと実感し、風俗Ωという立場に対して恥ずかしい気持ちまで生まれていた。
　暴君との狭いワンルームでの生活は、自分が地上にいた頃を思い出させる。訓練生だったとき、仲間と狭い寮で雑魚寝していた、明るい場所をまだ目指せていた自分が不意に表に表れて。暴君に仲間に接するような態度を取ってしまう。闇に落ちた自分には眩しくて堪らず、封印していた思い出が夢にまで現れるようになっていた。

　燻る煙でモヤモヤ息苦しい日が続く中、暴君は中学生になった。

　暴君が捨てようとしたランドセルを記念として箱に積めた後で、新しい鞄が代わりに部屋の隅に置かれる。詰め襟姿の学生服からは、ランドセル姿ほどの違和感は感じない。新入生にも、見えないけど。


｢一層のこと、眼鏡でもかけるか｣　


　成績も外見も普通を目指す暴君は、黒縁伊達眼鏡で中学デビュー。きっと毎日見る顔だから気づいてないんだろう。暴君の整った顔に眼鏡を掛けても目立つだけ。本人は満足していたので自分は黙っておいた。