例えβに生まれても

三日月

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36 計略の王子様

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俺の、今出来る精一杯の告白。
ちゃんと口に出せた達成感に、ほっと一息・・・のはずが。


「ハルは、俺と結婚してくれないのか・・・?」


背後から、清人様の低く地を這う唸り声にビクッッ
思わず目を開けて振り返ったらね。
仄暗い瞳の清人様と目があって、深淵にそのまま意識を引きずり込まれそうになって身体が竦んでしまったよ。
き、清人様と、結婚なんて、とんでもないというか。
それに、俺はβで清人様はαだからね。
同性の結婚は現実的に出来ないというか。
だから、考えたこともなかったというか・・・


「おい、こら、そこの駄犬は黙っとけって言っただろうが!
まだ高校生のハルちゃんに、そんな目で迫るなっっ」


パーンッ
軽快な音がして、清人様の頭が目の前で揺れた。
いつの間にか清人様の背後に回っていたらしい陽太様が、どうやら清人様の頭を叩かれたみたいだよ。
清人様は、そちらの方へグリンッと頭の向きを変えて抗議される。


「邪魔をするな」


怒りを含む迫力たっぷりの声は、聞いてるだけで卒倒しそうだよ。
それに、急にギリギリと抱きしめる腕の力を強められてとても痛い。
でも、口に出せる雰囲気じゃないからぐっと涙目で耐える。


「お前が、力づくの計算づくでいつからハルちゃんを囲おうとしたのかは知らねーがな。
相変わらず、余裕が無さ過ぎなんだよ。
そんなに畳み掛けて、この場でハルちゃんにうんと言わせても、どこかて綻びが生まれることくれぇは頭じゃわかってんだろう?
それでも、まずは手に入れてぇからって自分本位のα様らしさを突き通すロクデナシになるっていうなら、ハルちゃんを蔑ろにしているお前をこの場で拘束。
で、前にも言ってるが、二度と顔を合わせられないようにする」


腕を組み、高みから清人様に宣言される陽太様。
その背後で、Ωには出せないフェロモンが立ち込めて清人様を威嚇しているのが見える。
清人様は、ギリギリ歯軋りして陽太様を睨みつけられていたんだけど、スッと視線を外されて腕の力も弱めてくださった。
い、息をするのも忘れちゃってたよ!
はぁっと肩の力を抜いて深呼吸。
互角に見えてる姉弟喧嘩も怖いけど、一方的な親子喧嘩も怖い・・・俺は、物心ついたときから父さんや兄ちゃんと大きな喧嘩をした覚えがないからね。
慣れてないのもあるんだろうけど・・・
でも、これで清人様が陽太様のことを聞いてくださって、陽太様がなにか良い方法を思いついてくださったら解決するかなって期待したんだけど。
その場に訪れた、凪いだ空気が一瞬で塗り替えられた。
不意に、ゴオッと俺と清人様を中心とした清人様のフェロモンが渦巻いたんだよ!!
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