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36 計略の王子様
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俺はこれからどうなるの?
初めての後ろ姿のモデルは、えーっと、上手くできたんだよね?
それから、清人様に噛まれて変異種Ωになったことにすると言われて。
飛鳥様も清人様も喧嘩をされるから怖くなって。
うんうん、その時点から俺は話についていけてないんだよ。
それなのに、学校に行けないとか、清人様と南の離れで暮らすとかどんどん先の話までされてしまって。
陽太様も怒り出して、怖くて言えないままだったけれどね。
俺はみんなと卒業したいし、清人様と暮らすなんて絶対に無理っ
ここで頑張って言わないと、このままなし崩しで現実になりそうだよね。
だって、陽太様は清人様が今の状況になるように狙ってしていたみたいに言われていたんだから!
陽太様は、とっても清人様に怒られてるし。
お仕事に行かれた飛鳥様は、清人様が香水のモデルをされたこともだし、突然俺なんかが清人様の番になったと言われて怒っておられたし。
清人様は、ご機嫌だけど陽太様の話を聞こうとされていないし。
俺が何か言える隙間なんて、思い返しても全く無かったけど。
ここで言わないと、うん、怖がってる場合じゃないよっ
「あ、あの・・・」
「なぁに、ハル?」
顔を上げると、見てしまった俺の目が蕩けちゃいそうなくらいに甘い微笑みを浮かべた清人様のアップ。
清人様のキラキラが、またとんでもなくレベルアップしてるよ!
ドキッと緊張で身体が固まるより先に、ふにゃんと力が抜けちゃうくらいに!
好きだよ、愛してるよって、頭の中に直接響いてくる清人様のフェロモンがね。
頭の天辺から足の先までたっぷりと降り注いで来て、俺を全力で守るよって甘やかしてあっという間に包まれていた。
チュッ、チュッと、額にも頬にも唇にも、柔らかな清人様のキスの雨を受けて。
その一回、一回に、清人様の気持ちが籠もっていてじんわりと染みてくるからあまりに幸せで思考も溶けちゃう。
あれ、俺、何を言おうとしてたんだろう・・・?
「おい、やり過ぎだ、清人。
お前じゃ話になんねぇから、何もせずに黙ってハルちゃんの椅子になってろ。
それが嫌なら、この部屋から出ていけ」
とっぷりと清人様のフェロモンに浸されたところを、割って入ってきたのは陽太様の呆れた声。
「はぁ?
何がやりすぎだ。
これでも足りない」
「あほか、よっく見てみろ。
ハルちゃんが、フェロモン酔いでひっくり返るぞ。
いくら、ちょいちょいお前のフェロモンをまとわりつかせてたハルちゃんでも、そんな手加減無しのお前の超絶重い怨念みてぇなフェロモン浴びて耐えられるかよ」
「は?
俺のハルへの想いが込められたフェロモンを、怨念とは聞き捨てならない」
「あ"ー、わかった、わかった。
今のは俺の言い方が悪かった。
兎に角、ソレ、引っ込めろ。
ハルちゃんの意識が飛ぶぞ」
「はっ、何を言って・・・ハル?
ハル、大丈夫か?」
フェロモンの膜の外から、清人様に話しかけられてるのはわかるのに、頭の中で絶え間なく愛を囁かれてよく聞こえないよ。
こてんと首を傾げた反動で、甘い囁きにゾクゾクと背中が震えてしまう。
「ほら見ろ。
さっさと消せ」
「ハル・・・」
俺の顔を覗き込む、とても残念そうな清人様と半目になってる陽太様。
薄れたフェロモンが、密着した膜からふんわり羽織ったヴェールくらいになるにつれ、俺はやっと二人と向き合うことが出来たよ。
初めての後ろ姿のモデルは、えーっと、上手くできたんだよね?
それから、清人様に噛まれて変異種Ωになったことにすると言われて。
飛鳥様も清人様も喧嘩をされるから怖くなって。
うんうん、その時点から俺は話についていけてないんだよ。
それなのに、学校に行けないとか、清人様と南の離れで暮らすとかどんどん先の話までされてしまって。
陽太様も怒り出して、怖くて言えないままだったけれどね。
俺はみんなと卒業したいし、清人様と暮らすなんて絶対に無理っ
ここで頑張って言わないと、このままなし崩しで現実になりそうだよね。
だって、陽太様は清人様が今の状況になるように狙ってしていたみたいに言われていたんだから!
陽太様は、とっても清人様に怒られてるし。
お仕事に行かれた飛鳥様は、清人様が香水のモデルをされたこともだし、突然俺なんかが清人様の番になったと言われて怒っておられたし。
清人様は、ご機嫌だけど陽太様の話を聞こうとされていないし。
俺が何か言える隙間なんて、思い返しても全く無かったけど。
ここで言わないと、うん、怖がってる場合じゃないよっ
「あ、あの・・・」
「なぁに、ハル?」
顔を上げると、見てしまった俺の目が蕩けちゃいそうなくらいに甘い微笑みを浮かべた清人様のアップ。
清人様のキラキラが、またとんでもなくレベルアップしてるよ!
ドキッと緊張で身体が固まるより先に、ふにゃんと力が抜けちゃうくらいに!
好きだよ、愛してるよって、頭の中に直接響いてくる清人様のフェロモンがね。
頭の天辺から足の先までたっぷりと降り注いで来て、俺を全力で守るよって甘やかしてあっという間に包まれていた。
チュッ、チュッと、額にも頬にも唇にも、柔らかな清人様のキスの雨を受けて。
その一回、一回に、清人様の気持ちが籠もっていてじんわりと染みてくるからあまりに幸せで思考も溶けちゃう。
あれ、俺、何を言おうとしてたんだろう・・・?
「おい、やり過ぎだ、清人。
お前じゃ話になんねぇから、何もせずに黙ってハルちゃんの椅子になってろ。
それが嫌なら、この部屋から出ていけ」
とっぷりと清人様のフェロモンに浸されたところを、割って入ってきたのは陽太様の呆れた声。
「はぁ?
何がやりすぎだ。
これでも足りない」
「あほか、よっく見てみろ。
ハルちゃんが、フェロモン酔いでひっくり返るぞ。
いくら、ちょいちょいお前のフェロモンをまとわりつかせてたハルちゃんでも、そんな手加減無しのお前の超絶重い怨念みてぇなフェロモン浴びて耐えられるかよ」
「は?
俺のハルへの想いが込められたフェロモンを、怨念とは聞き捨てならない」
「あ"ー、わかった、わかった。
今のは俺の言い方が悪かった。
兎に角、ソレ、引っ込めろ。
ハルちゃんの意識が飛ぶぞ」
「はっ、何を言って・・・ハル?
ハル、大丈夫か?」
フェロモンの膜の外から、清人様に話しかけられてるのはわかるのに、頭の中で絶え間なく愛を囁かれてよく聞こえないよ。
こてんと首を傾げた反動で、甘い囁きにゾクゾクと背中が震えてしまう。
「ほら見ろ。
さっさと消せ」
「ハル・・・」
俺の顔を覗き込む、とても残念そうな清人様と半目になってる陽太様。
薄れたフェロモンが、密着した膜からふんわり羽織ったヴェールくらいになるにつれ、俺はやっと二人と向き合うことが出来たよ。
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