例えβに生まれても

三日月

文字の大きさ
上 下
614 / 621
36 計略の王子様

8

しおりを挟む
清人様から抱きしめられているのは緊張しちゃうけど、この体勢だとお顔は見ないように出来るからね。
俺は陽太様と話すことに集中することにしたよ。
陽太様なら、俺の話をちゃんと聞いてくださるからね。


「あの、陽太様」

「あ、ハルちゃん、ソレ、無しな」

「ソレ?」


なんのことだろう?
わからなくて首を傾げて戸惑う。
陽太様は、足を伸ばしてゴロリとこちら向きに身体を転がされたよ。


「その様付け」

「そそそそそそそんなの、無理ですよぉっ」


生まれたときから菊川家に仕えるのが当たり前な環境で、様付けするのは身に染み付いてますし、様付け無しでお名前を呼ぶなんてとんでもないよっっ
俺が首を横に強く振って拒むと、陽太様は苦笑い。
肘を立てて頭を支えながら、「無理と言われてもなぁ」と言葉を続けられる。


「今はまだ清人の番になってなくても、もし本当に変異種Ωになればそのつもりはあるんだろう?
まぁ、飛鳥の前で噛まれた以上は番のフリをして貰うしかないんだけどな。
Ωが番相手を様付けなんて、大昔みてぇでゾッとする。
ハルちゃんは、元々使用人の家族ってだけで様付にしてんだろ?
ハルちゃんが使用人ってわけでもねぇんだから、前からおかしかったんだよ。
これを機に、俺や澪、飛鳥に清人も全員様付禁止。
まぁ、急に難しいってんなら、せめてさん付け、清人についちゃよそよそし過ぎて清人の態度とバランスが取れねぇから頑張って呼び捨てに慣れて。
そのパワーアップしてるデレデレ清人を見ている限り、ハルちゃんがソイツに嬉しくて堪らなくなるようなこと言ったのは明白で、そこはハルちゃんにも責任がありそうだしな。
いくら、清人が独占欲丸出しのバカαだとしても、無理やり噛むなんてことはしねぇだろうし・・・いや、するな。
なぁ、ハルちゃん」


陽太様は、急に起き上がられて仁王立ち。
優しい口調で俺の名前を呼ばれているのに、顔は全然笑っておられないし、俺の向こう側の清人様に向けてグラグラ沸騰してるマグマのような殺気が出てるし、目なんて好戦的に輝いていてかなり怖いよっ


「無理やりなら、拘束してまた留学させるけど、そのへんはどうなんだ?」


む、無理やり・・・では、無かったような?
記憶が正直曖昧なんだよね。
どう言えば良いんだろう。
上手く言わないと、清人様が怒られそうだよ。
でも、陽太様に嘘はつきたくないし。
俺が答え方を迷っているのが、陽太様には完全にお見通しだったみたい。
陽太様は、テーブルの脇を通って近づいて来られるとね。
大きく右手を振りかぶって、勢いよく清人様の頭目掛けてフルスイング。
パァンッと派手な音が出るくらい叩かれたんだよっっ
その手の動きで、清人様のお膝に座っていた俺が風を感じてしまうくらいに思い切りよく!
清人様が避けると、俺の頭が危なかったからかな。
清人様は避けずで、陽太様をそれを見越しての全力だったみたい。


「なにしやがるっ」

「お前、またフェロモン使ってハルちゃんの意識をコントロールしたんじゃねぇだろうなぁっ」

「ハッ、俺はハルから好きだと言われたんだ。
合意だ」

「え、マジでかっ」

「おいっ、人の頭を叩いたことへの詫びはねぇのかっ」

「は?
お前の悪質な計画通り、ことを進めることになってんだぞ?
少しくらいその頭を改良する意味じゃ適当だろうが」


俺を挟んでの親子睨み合いに、震え上がるしかありませんでした。
しおりを挟む
感想 70

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

白銀の城の俺と僕

片海 鏡
BL
絶海の孤島。水の医神エンディリアムを祀る医療神殿ルエンカーナ。島全体が白銀の建物の集合体《神殿》によって形作られ、彼らの高度かつ不可思議な医療技術による治療を願う者達が日々海を渡ってやって来る。白銀の髪と紺色の目を持って生まれた子供は聖徒として神殿に召し上げられる。オメガの青年エンティーは不遇を受けながらも懸命に神殿で働いていた。ある出来事をきっかけに島を統治する皇族のαの青年シャングアと共に日々を過ごし始める。 *独自の設定ありのオメガバースです。恋愛ありきのエンティーとシャングアの成長物語です。下の話(セクハラ的なもの)は話しますが、性行為の様なものは一切ありません。マイペースな更新です。*

お世話したいαしか勝たん!

沙耶
BL
神崎斗真はオメガである。総合病院でオメガ科の医師として働くうちに、ヒートが悪化。次のヒートは抑制剤無しで迎えなさいと言われてしまった。 悩んでいるときに相談に乗ってくれたα、立花優翔が、「俺と一緒にヒートを過ごさない?」と言ってくれた…? 優しい彼に乗せられて一緒に過ごすことになったけど、彼はΩをお世話したい系αだった?! ※完結設定にしていますが、番外編を突如として投稿することがございます。ご了承ください。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

処理中です...