例えβに生まれても

三日月

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36 計略の王子様

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「よ、よ、陽太様ぁあっ」


一刻も早く止めなきゃと切羽詰まっていた俺は。
後部座席からガバッと両手を回して、助手席に座っていた陽太様の肩を掴むと力いっぱい揺らした。
きっと俺なんかにはわからないいろんなことをお考えだとは思いますっ
思いますが、今は二人を止めてくださーいっ


「うわっ、ちょ、ハ、ハルちゃん?!」


考えることに夢中になっておられた陽太様は、突然掴まれたことにも、ガクガク遠慮無しに揺さぶられることにもビックリ。
でも、俺は陽太様の方を見る余裕がなくて、開いてる扉の向こう側で言い争う二人から怖いのに目が離せなくなっててね。
ハラハラドキドキ。
心臓が見てるだけで破裂しそう。
急に殴り合いとかにならないよね?
フェロモンの応酬が始まったら、俺も気持ち悪くなったり倒れたりしちゃうんだろうなぁ。

座ったままだと扉の枠の中、胸から下しか見えないんだけどね。
向かいあってる二人が、どんどん近付いて、どんどん大きな声を出して。

わーっ、このままだとお二人の喧嘩がヒートアップして怪我をされてしまわれるよ!


「だいたい、正規ルートも通さない仕事をとってくるんじゃないわよっ
菊川物産が扱う商品以外に出るとか、撮影計画以前の問題でしょう?!
勝手に契約書にもサインして突っ込んでこないでよっ」

「結果、言い値で取引始めるんだから問題無いだろい」

「それは、結果っ
専売契約も結べないし、半日もあなたが撮影に駆り出されて拘束されることも含めたらマイナスなの。
ボランティアでモデルをやらないで。
価値の見極めをなさい。
菊川物産限定の取扱商品にしか、私もあなたも出ない。
付加価値をわざわざ作って戦略実行してるんだから、当事者のあなたが場を乱さないで」

「知ったことか」


飛鳥様が怒れば怒るほど、清人様の声も態度も冷めていくみたい。
Ω堕ちって飛鳥様が言われたときに比べたら、清人様の声は冷ややかだ。
もっと二人がビシバシやり合うかと思っていたのに・・・


「ハ、ハルちゃん、手を止めてくれる?」

「うわっ、すすすすすみませんっ」


陽太様の声がやっと聞こえるくらいに落ち着いてね。
慌てて陽太様の肩から手を離したよ。
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