例えβに生まれても

三日月

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35 隔離の王子様

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「ごめんな、ハルちゃん!
清人のバカは、最低限の接触で済むように隔離しとくから、番になったことにしてくれ!」

「ふぇ???」


急に陽太様から頭を下げられたのと、言われた内容が突拍子もなくってその場で飛び上がってしまった。
清人様の衣装を抱えて走っていた蔦次さんが、「大丈夫?」って目線で俺の様子を伺って足を止めてくれたんだけどね。
お仕事中なのに申し訳なくって「大丈夫です」って笑顔を返してしまった。
うん、全然大丈夫じゃないんだけどね!
きっと、離れてるからガチガチ笑顔なのは気づかれてないはずだよ。

スタジオの隅で、撮影とは全く関係ない二人のやり取りだからね。
他に気にしている人もいない。
蔦次さんの進行方向にいた清人様とは目が合ったんだけどね。
頭を下げてる陽太様を確認されるとうっすらと微笑えまれて、こちらまでは来ようとされなかったよ。

それから、陽太様に頭を上げてくださいって何度も何度もお願いして、漸く目があったらね。
陽太様は沈痛の面持ちで、今度は俺に両掌を合わせて拝みだしたよ!!


「高校も途中だってのは、わかってるし。
ハルちゃんにとったら、なんのメリットもない話で押し付けなんだけど。
ここは、うんって言ってほしい。
俺に、いや、菊川家で出来ることはなんでもするから!!」

「あ、あの、そそんなこと言われても...」


オロオロしてしまう俺に、陽太様はそうするしか手がないんだと切羽詰まった口調で教えてくださった。


「清人がハルちゃんを噛んだ直後だってわかる現場に、飛鳥が居合わせたのが一番まずかった。
ハルちゃんのその噛み跡について事情を知らない飛鳥を納得させる理由が、フェロモンレイプで番になった一択しかないんだ」


まだ、飛鳥様に理由を話す前なのに、陽太様は完全に諦めモード。
陽太様だったら、飛鳥様を納得させることなんて簡単な気がするのに。
陽太様は頭を掻きながら、「本当に申し訳ないんだけど」ととても辛そうに顔を顰められた。


「俺が菊川家に入るまで、飛鳥はずっと頭に蜘蛛の巣張ってるババアどもからα以外は価値がないって凝り固まった洗脳教育を受けてるからさ。
αが相手を噛むのは、支配したい、手に入れたい、あとフェロモンレイプのときくらいで。
飛鳥の頭じゃ、清人がハルちゃんを噛むっていうなら、フェロモンレイプしか思いつかないし納得できないんだよ。
言い方が悪くなるけど。
さっきも飛鳥が言っていたように、ハルちゃんは使用人家系のしかも昔っから清人がかまっていたβだろ?
わざわざ清人の方から、支配したい、手に入れたいなんて思うわけないって考えしか出てこないんだ」
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