例えβに生まれても

35 隔離の王子様

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やってくれたな、って...何をだろう？
お二人とも、目を合わせたまま動かれなくなってしまったよ。

咄嗟には、意味が分からなかったんだけどね。
目と目で会話？
んー、会話というには、不穏な空気がするから、目と目で応酬してるのかも？
どちらにしても、とても聞ける雰囲気じゃないし。
自分で考えるしかないのかなぁと、頭を回転させる。
撮影のことなのかな？
それにしては、陽太様の言い方が意味深だったよね。

やってくれた、でしょ？
なにかをやったって、ことでしょ？
えーっと、やったっていうのは.....やった、やった、や...やる？

やるって、やるって、やーるぅぅーーになっちゃうじゃないかっ

たどり着いたその答えに目を見開いて。
同時に、誤解されてる恥ずかしさに焦って両手で顔を隠していた。

ややややってませーーーんっっ
陽太様、俺、噛まれちゃいましたが番になってないっていうか、清人様とはその、途中...でいいの？
えっと、そう、未遂というかっっ
ぷるぷる震えていたら、不審に感じたお二人に囲まれていた。


「どうしたの、ハル？
もうあのアバズレはいないから、怖がらなくて大丈夫だ」

「っとに、お前らは愚弟だのアバズレだの相変わらず仲わっりぃなぁ。
清人は、とっとと身仕度整えて仕事に行く準備だろっ
自分が持ってきた仕事に穴を開ける、無責任なダメ人間だとハルちゃんに思われたいのか？」

「それは...」


清人様は、顔を隠したままの俺の頭を優しく撫でて下さり、俺の側から離れるのを躊躇っておられたけどね。
手をうなじへと回され、御自分が噛んだ跡を指で確かめて。
俺の顔が耳まで赤くなっていることに気づかれたみたい。
フフッて楽しそうに笑って、耳朶を揉まれてしまった。


「あぁ、本当にハルは可愛いなぁ。
そうだ、陽太さん。
俺やハルと一緒にスタジオまで来るよな？
ハルのこと、任せていいんだよな？」

「はっ、白々しい。
合鍵でいくらでも開けるガバガバセキュリティなこんな部屋に、飛鳥にとっちゃ、Ωの俺と変異種Ωのハルちゃんの二人で残らせておくとか、納得しねぇだろう。
事情を知ってる澪は、あとから知っても怒らないだろうがな」

「だよな」


陽太様の返答は、清人様にとって予測していたものだったみたいだ。
あっさりとした相槌。


「ハルに格好良いところみせなきゃな」


指の隙間から、ことのなり行きを伺っていた俺と目が合うとね。
艶やかに微笑まれ、俺の前髪にふわりと軽いキスを一回。
それから、着替えるために離れていかれた
ふ、ふぇぇ...き、清人様ぁ。
そんなドラマみたいなこと、俺にしないでくださいよぉ。
恥ずかしすぎて、その場にしゃがんでしまったよ！