例えβに生まれても

三日月

文字の大きさ
上 下
594 / 621
35 隔離の王子様

13

しおりを挟む
「清人は仕事の途中、現場を放り出してここに引きこもってんだからな?!
飛鳥は、それを切り上げさせて、あっちに戻すのが仕事だろう」

「だ、だけど、陽太さん!
あんなの見て、スルーなんてできないわよっ」


陽太様から諫められても、飛鳥様は納得できず。
俺を指差し、矛を収めない。
そ、そうだよね。
急にこんな状況を目にしたら、仕事どころじゃなくなるよね。
小さい時から知っている使用人の息子と弟が、ほぼ裸で抱き合ってて。
しかも、うなじの噛み跡だって見てるんだもんっ
このまま、飛鳥様に問い詰められるんだろうなって、俺は諦めたんだけど。

陽太さんは、微塵も怯まない。
飛鳥様の目を真っすぐ見返し、指とは逆側の扉を指差してここから出ろと迫る。


「清人は着替えさせてすぐに向かわせる。
お前は、それまで現場を繋ぐのが仕事だろう」

「なっ?!
なんで私が愚弟のためにそんなことしなくちゃいけないの??
だって、元々ここにきたのは社長から陽太さんの付き添いをしろって言われたからよ??」

「菊川物産の社員だからだ。
菊川物産の社員として顔を出して、ポスター撮りが出来ていないってことまで耳にしてんだ。
それとも、俺にあそこに行って説明しろっていうのか?」

「そ、それは...」


飛鳥様は、モゴモゴと言葉を濁す。
凄いっ、こんなに弱気になってく飛鳥様、初めて見たよ。
状況も忘れて、思わず珍しい二人のやり取りをマジマジ見ていたら、飛鳥様から両目から殺人ビームでも出そうなくらい怖い顔で睨まれた。

ヒエッ

首をすくめて、清人様の後ろに隠れる。


「......わかったわ。
だ・け・どっ
屋敷に戻ったら、全て白状してもらいますからね!!!」


飛鳥様は、言葉の勢いのままに椅子からカバンをひったくるように持ち上げ、荒々しい足取りで出ていかれた。
バンッと、蝶番が弾け飛ぶんじゃないかと思うくらいに強く扉を閉めていかれたので、俺は心臓が止まりそうになったよ。
陽太様は、「あいつは乱暴すぎるな」とぼやかれていた。

ひ、ひとまず、切り抜けられた、んだよね??

はぁ~と息をついて、その場にしゃがもうとしたら、俺の周りにふわふわ漂っていた清人様の美味しそうな匂いがするフェロモンが、一気に濃厚になってね。
なんだろうと、清人様を見上げたら、うっすらと、そう、悪巧みがうまくいってニヤリと笑う悪人、うぅん、悪人だって青ざめそうなくらい迫力のある悪魔の微笑みを浮かべておられた。
思わず腰が引けて、清人様から離れようとしたんだけどね。
清人様はそれを許さず、俺を抱き締めてクスクス笑いだされる。


「あぁ、これでハルは俺のものだ」


あの...どういうことでしょうか?
しおりを挟む
感想 70

あなたにおすすめの小説

元ベータ後天性オメガ

桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。 ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。 主人公(受) 17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。 ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。 藤宮春樹(ふじみやはるき) 友人兼ライバル(攻) 金髪イケメン身長182cm ベータを偽っているアルファ 名前決まりました(1月26日) 決まるまではナナシくん‥。 大上礼央(おおかみれお) 名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥ ⭐︎コメント受付中 前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。 宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。

Ωの不幸は蜜の味

grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。 Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。 そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。 何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。 6千文字程度のショートショート。 思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。

オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜

トマトふぁ之助
BL
 某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。  そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。  聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。

毒/同級生×同級生/オメガバース(α×β)

ハタセ
BL
βに強い執着を向けるαと、そんなαから「俺はお前の運命にはなれない」と言って逃げようとするβのオメガバースのお話です。

暑がりになったのはお前のせいかっ

わさび
BL
ただのβである僕は最近身体の調子が悪い なんでだろう? そんな僕の隣には今日も光り輝くαの幼馴染、空がいた

淫愛家族

箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。 事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。 二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。 だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

白い部屋で愛を囁いて

氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。 シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。 ※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

処理中です...