例えβに生まれても

三日月

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35 隔離の王子様

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「おい、飛鳥。
足をどけろ、やりすぎだ」

「あら、陽太さんたら怖い顔!
嫌だわ、これくらいしないと愚弟にはわからないから、私は姉としてしつけているだけよ?
次期当主でもないのに、フラフラ留学したり、急に帰国したりの好き放題。
そろそろ身の程を教えとかないと」


陽太様に注意されて、飛鳥様のフェロモンも声も幾分和らいだ。
飛鳥様は、昔から陽太様に優しいんだよ。
αの中には、孕親を嫌うというか無視する人もいるからね。
Ωから産まれただけで、αとしての価値が下がるって見方が定着していた頃の名残なのかな。

俺から見ても、αとしてのプライドがとっっっても高い飛鳥様が、陽太様に笑顔でお話をされているのは意外なことなんだよね。
でも、おかげで陽太様がいるとこのお二人の姉弟喧嘩は大事にならずに済むんだ。

ただ、今回の飛鳥様はね。
陽太様には笑顔で対応されても、清人様を踏みつけるなと言われてることには拒んで聞き入れようとはされない。

でも、その気がそれた間を清人様は逃さなかった。
清人様の左手が、踏みつけている足首を力任せに横に払う。
バランスを崩しそうになった飛鳥様がよろめいた間に、清人様は俺を抱き締めたままその下から抜け出してね。
ガウンが前開でも気になさらず立ち上がって、俺にも手を貸してくださった。


「大丈夫、ハル?」

「き、清人様の方こそ.....」


立ち上がって、目の前の清人様を見たらね。
左肩の鎖骨の辺り。
白いガウンについたハイヒールの靴跡は、見ているだけでも痛々しい。
ケガをしてないか心配になって。
つま先立ちで左肩に手を伸ばして、ガウンをつかむと引っ張ったんだ。

あんなに強く踏まれたら、赤くは絶対になってると思う。
もししたら、腫れたり、内出血とか酷いことになってるかも。
とにかく心配で。
その行動が、周りにどう見えるかなんて考える余裕もなかったんだ。

だから。


「.....なんなの、本当に番になったとでも言うつもり?」


飛鳥様の声に、ハッと我に返り青ざめました。
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