例えβに生まれても

三日月

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35 隔離の王子様

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ドッドッドッ

俺の心臓は、飛鳥様が清人様を追い詰めているこの状況に爆発寸前の大音量で鳴り響いていた。
どどどどうしようっっ

「ちょっとふざけて噛まれちゃったんです」

なんて...通じない、よね?
バース性教育を初めて受けるβが、小学校で番ごっこしたってαから怒られるくらいだもん!
どこから漏れたのか、抗議文が小学校に来て教育委員会が大騒ぎして全校集会で怒られたもん!

それに、まだ血が完全に乾いていないこの噛み跡は牙2本分。
背後からなら、バッチリ見られちゃってますよね。
カプッて歯を肌に食い込ませるだけの噛むような、ふざけた跡じゃないのはαの飛鳥様なら気付いておられますよね。

施錠されていた部屋には、俺と清人様しかいなかったんだ。
噛んだのは、清人様だってことまでバレバレだよね。

それに、αが番を得るための行動はふざけてするようなことじゃないし。
αの牙は、自由自在に出したり引っ込めたり出来るものじゃないし。

αの牙は、相手を求めるか、屈服させたいときに出るものだって教わってる。
そんなαの牙は、αのプライドに直結しているからね。
安易に噛んじゃうなんて、自分を安売りするようなものなんだよ。

清人様が俺を、その、変異種Ωにしようとしていて。
まだβのままなんだけど噛まれてしまいましたって......言うしかない?
こんなに怒っている飛鳥様に、信じてもらえるのかな?
澪様や陽太様みたいに。

緊張と不安で押し潰されそうになっていると、清人様は俺を抱き止めたまま、俺の後頭部を優しく撫でてくださった。
ふっと力が抜けて耳を澄ますと、トクトクトク、時計みたいに一定のリズムを刻む心音が聞こえてくる。
これは、清人様の心臓の音。
乱れたガウンが開いて、素肌をさらした清人様の胸にペタリと寄せているとだんだん落ち着いてきた。

俺の着ているガウンもぐちゃぐちゃだからね。 
よくよく考えたら、飛鳥様と陽太様の目の前で、床に倒れて裸で抱き合ってるのと変わらないんだった!
落ち着いている場合じゃないよ!
清人様は、なんでそんなに冷静なんだろう。

いつもなら、口喧嘩でも飛鳥様に直ぐにやり返す清人様が足蹴にされているのに抵抗もされていないのも.....なんか、怖いくらいだな。
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