例えβに生まれても

34 反則の王子様

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息が出来ないっ

清人様の牙をすぐ目の前に晒されて、うっすら開いた唇の間からヒュッと息をのんだんだけど。
そこから吐き出せなくなってしまう。
身動きが微塵も取れない。
今の清人様の前で、勝手な行動を取っちゃいけない強迫観念に襲われてしまう。

優しい口調とは裏腹に、まとわりついて迫ってくる清人様の熱い視線とその存在感にのまれてクラクラ目眩までしてくるよ。


「ねぇ、ハル。
このあとのスチール撮影で、この牙は撮らせたくないんだ。
俺の牙はハルに捧げてる。
ハルを守るために他に晒すのは、さっきので十分だ。
だから、牙を収めるために手伝って？｣


口から離した指で、俺の唇をなぞる清人様。
しっとり唾液で濡れた指に触れられ、俺の口は呼吸することを思い出したみたいだ。
清人様の指に息がかかることを恐れながら、そこからユルユル息を吐いた。

俺が、清人様のお手伝い？
そんなの、俺には何も出来ない、ですよ。
お役に立てそうも無いですって断りたかったのに。

魂を吸い込まれそうなくらい深くて暗い瞳に見つめられて、頭の中がぼーっとしちゃって。
清人様が、牙を輝かせて色艶を含んだ笑みを俺に見せてくださるからふわふわ落ち着かなくなってきて。
怖くなってきて。

そんな、浮遊していた感覚の中で唯一はっきり知覚していた清人様の濡れた指先にすがりたくなって。

意識して、じゃなかったんだけどね。

パクンって。

清人様の指を、口に含んじゃってましたあぁっ


「ハル・・・？」


清人様も驚いてる。
俺も驚いてる。

二人して、ビックリ。

え、え、う、俺、なんでなんで清人様の指をくわえてるんだろうっっ