例えβに生まれても

三日月

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33 興奮の王子様

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あんまり不安すぎて、泣きそうになっていたからね。
監督さんが、わざわざセットの際まで走ってきて説明してくれた。
カメラワークの位置とか、期待されているポーズとかは、全部清人様の頭に入っているから安心するようにって。
清人様も、大丈夫だってその時は頭を優しく撫でながら微笑んでくださった。

画像は編集してまとめるからね。
清人様のリードで動いたり、自分で勝手に動いても良いから自由にリラックスしてって言われたよ。
俺にも気を使って、撮影中断してくださるしね。
改めて「よろしくお願いいたしますっ」て、頭を下げたんだけど、そこでもいっぱい噛んじゃったし、勝手に動く余裕なんて俺にはないよ。

お姉さんは、蓮華さん達が俺に穴を開けたいんだろうなって思えるビシバシ強い視線を注いでるのをね。
ニヤニヤ離れた場所から眺めて終始ご機嫌。
で、出来たらあまり見ないように言っていただきたいんだけどね。


「あの顔、見た?
目の端にも入れてなかったあなたが、清人のお気に入りってわかってショックなのと、蔑ろにされた怒りで汚いったら!」


休憩時間に、わざわざ焚き付けるようなことを俺に言ってこられるんだよっ
そんな大きな声だと、絶対に聞こえてるよっ
サーッて、血の気が引いたよっっ

素人の俺が清人様の添え物扱いじゃなくなったのに、全く撮影の心配はされていなくて、清人様に「陽太さんにはこっちから説明するし、しっかり噛んで誰も遥馬さんにちょっかいをかけてこないように牽制してきなさい」なんて。
本番直前、高らかに声を響かせて後押しまでされるんだ。

うわぁああぁぁあ.......本当に、かかかかか噛まれちゃうのかぁ.......

セットの中に、入る前。
俺は、不安と緊張で無意識に自分のうなじを擦っていたみたい。
隣で立っておられた清人様の指が、自分の指に絡むまで全然気付いていなかったよ。
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