例えβに生まれても

三日月

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33 興奮の王子様

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お姉さんの声は、周りにも聞かれていたみたい。
準備に動かれていたスタッフさんの中には、クスクス笑いながら俺を見る人もいてね。
俺は、居心地が悪いし、俺が清人様に見合わないのはよく解ってるからね。
黙ってやり過ごそうって、俺にしては強気な態度をとるつもりだったんだけどね。


「...それ以上、ハルを貶めるな。
縊るぞ」


目を閉じたままの清人様が返した声は、大きくないし、荒げてもいないし、日常会話レベルの普通の声だったんだけど。
お姉さんも、離れた場所でクスクス笑っていたスタッフさん達を一瞬で凍らせる威力があったみたい。

一番遠い人は、セットの上で照明の調整をしていたスタッフさんかな。
スタジオにいる全員じゃなかったけどね。
一斉に、息をヒュッて息を飲み込んだ音が重なって、小さい音なのにそれが響いて聞こえるくらいスタジオ中が静まり返っていてね。

直後に「すみませんっ」と、お姉さんもスタッフさんも直立不動からの直角御辞儀で清人様に向かって謝られたんだよっ
照明調整の方なんて、足場から落っこちって命綱みたいなのでブラブラ天井で揺れながら謝られていたよっ

び、び、ビックリした!

それに対して、清人様は無反応。
目を閉じて、椅子に座られたまま。

こんなに注目されて謝られているのに、無視。

欅平さんと蔦次さんは、真っ青な顔で手を止めて。
息も殺して、清人様を恐る恐る伺ってね。
俺にまで、「再開して良いのかしら?」って、チラチラ視線を投げ掛けてくださったんだけど。

俺は、清人様から爪の先まで凍りそうな冷気を感じて固まってしまった。
お姉さんに変更の変更をお願いしたかったのに...清人様のメイク直しが終わるまで、瞬きも出来ずに凍っちゃったよ。
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