例えβに生まれても

32 区別の王子様

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｢んふふ～、それにしても、あの清人様に好きになれる相手がいるなんて.......βでもなんでもいてくれただけで嬉しいわぁ。
もぅ、あんなフェロモンをまともに受けてけろっと出来ちゃうなんて、遥馬ちゃん、どんだけ長いこと大切にされちゃってるのよ～｣


いろんな角度から、アシスタントの方と俺の頭を眺めて最終確認なのかな？
花の向きを微調整している欅平さんは、俺の周りを行ったり来たりしながら忙がしく手を動かしてるんだけど。
顔はね。
しみじみと目を細めて、鏡越しに俺に話しかけて来たんだ。
その表情が、優しくて嬉しそうで、本当に清人様のことが好きなんだなぁってわかるから返答に困ってしまう。

ど、どれだけと言われても...清人様が俺を番にしたいなんて言い出された中学のときになるんだろうけど。
清人様のことをむやみやたらに話しちゃいけないって、小さい頃から言われてるし。
みどりちゃんには、相談もしたいから話しちゃうんだけど.......絶対に秘密にするのを約束して貰えたから言えてることなんだよね。

欅平さんには、清人様がどんな話をされてるかもわからないし。
お仕事関係の人だと、清人様のプライベートなことは言っちゃいけないよね？
曖昧に笑って、誤魔化しちゃった。

欅平さんは、俺の態度に気分を悪くされなかったみたい。
フフッと口許に手を当てて、思い出し笑いをされた。


｢さっき、凄かったのよ～
遥馬ちゃんにフェロモン出したあの女、清人様ったら本気で制圧しちゃって。
同時に遥馬ちゃんに向かって、情熱的なフェロモンが溢れちゃって、溢れちゃって！
スタジオが、清人様の全く違うフェロモンで真っ二つになっちゃったのよ！
私達、遥馬ちゃんとおんなじβだから、余波で自分まで清人様の愛のフェロモンに包まれちゃって危うく気を失っちゃうとこだったものっ
蔦次(つたじ)ちゃんも、うっとりしちゃったわよねっ｣