例えβに生まれても

三日月

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32 区別の王子様

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周りの音も景色も抜け落ちて、清人様しか目に入らない。
清人様しか目に入らないのに、入ってくる清人様は俺だけを見てくれて触ってくれている。
世界に二人しかいないみたいだ。

そう、ストンと心に落ちてきたら。
ゆっくりと息を吐き出すことが出来た。
ひどく、心地よくて、安心しちゃう.......触れられた場所から蕩けそう。

ん、あ、あれ?
さっきまで、あの蓮華さんと再会を確かめあう直前だった....よね?
なんで、目の前に清人様がいらっしゃるの?


「.....清人様、ソレは何?」


清人様に見つめられて、ふわふわ優しいフェロモンに包まれて。
すっかり骨抜きで魂を抜かれていたのが。

一瞬で現実に意識を引き戻された。
ゾワッと全身が鳥肌、総毛立つ。
冷ややかに侮蔑する眼差しと口調。
ソレが、俺を差しているのは明白。
清人様の向こう側で、仁王立ちになっている蓮華さん。
射殺す尖った視線は、俺に向かって一直線。

あんなに甘えた声で清人様のお名前を呼ばれていたのに。
清人様の後ろで俺を睨んでいる蓮華さんには、甘さの欠片も残っていなかった。

その身体から、反乱した川のようにフェロモンが放たれて俺に迫ってくる。
敵意に満ちたそのプレッシャーは、清人様の甘いフェロモンしか知らない俺にはきつすぎる。
触れる前から、ギリギリ身体を締めつけてきて動けない。

俺は絶体絶命の状況なのに、蓮華さんの後ろでお姉さんは超絶ご機嫌にニンマリ。
おねえさ~ん、笑ってないで止めてくださいっ
俺、蓮華さんのフェロモンに殺されそうですっっ
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