例えβに生まれても

三日月

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32 区別の王子様

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ザワッ

スタジオの雰囲気が変わったのを、肌で感じて。
あぁ、きっとお二人が抱き合っている素敵なシーンに皆が釘付けなんだろうな。
見えてない分だけ、想像してモヤモヤする。

いつ目を開けたら良いんだろう。

俯いたまま目を閉じていたら、ふわり、前髪が揺れて。


「まぁっ」


嬉々とした欅平さんの声。
ん?
何かあったの?

恐る恐る目を開けたら、視界いっぱいに清人様の、かかか顔ーーーーーっ
メイクされて、いつもより色気も凄みも溢れ落ちてくる清人様の顔ぉぉーーーーー!


「ひゃあっ」


ゴツンッ

なんの心づもりもしてなかったから、至近距離で見てしまった衝撃は計り知れない。
下がりきれない背中が壁にあたって。
勢いよく後頭部をぶつけてしまった。

い、痛いっ

しかめた顔に。
避けきれない清人様の両手が伸びてくる。
打ち付けた後頭部には触れないように気を使って。
でも、これ以上ぶつけないように、首筋と腰に触れて来られた手で引き戻される。
ひゃぁあ、ち、ちか、近いですっ

頬を挟まれて、舞い上がりそうだよっ

膝を屈め、俺の顔をじっと見つめるその真剣な眼差しに、キュンと胸が鳴る。
あんなに胸が締め付けられ、苦しかったのが嘘みたいだ。
全然嫌な気持ちにならない。

でも、今度は違う苦しさで心臓がバクバク鳴り出した。
だって、ね。
息が出来ないんだよ!
息をのむような美しさって、本当に息をするのが二の次になっちゃうよ
俺の吐いた息が、清人様に当たるのが罪深すぎて吐けないっ


「ハル、大丈夫か?
気分が悪いのか?」


ひっそりと労る声に、フルフル首を横に振る。
大丈夫ですっ、吹き飛びました!
さっきまでの、モヤモヤ、ズキズキ、全部どこかにいっちゃいました!
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