例えβに生まれても

三日月

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10 叱責の王子様

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「ハル、ちゃんと座って。
シートベルト、してあげるから」


すっかり警戒モードの俺に、清人様は尖った気持ちを宥めるように優しく話しかけてくださって。
ここに座ってと、シートをポンポンと軽く叩いて、導かれて、座ってしまいました。

座った俺の前に身を乗り出して、シートベルトに手を伸ばされる清人様。
触れる肩にも、香水と体臭の混じった香りにもドキドキし過ぎて身を不自然なくらい反らしてしまう。

前から清人様にはドキドキしていたけど、Ωとか番とか迫られた後だとそのドキドキもレベルアップ。
清人様が御自分の席に戻られるまで、息、止めちゃってましたよ。
そのあとに、清人様がご自分のシートベルトを締められ漸く車は出発。

窓が特殊加工されているから、外から中は見えなかったけれど。
逆は、バッチリ見えていた。
俺達が中に入った途端、興味津々に車に近づく人が増えていて。

男女問わずその顔は気が緩んでいて、目をこらしながら車内を覗いてくる。
その姿に...ちょっと、笑ってしまった。
でもね。
そんな俺の横顔を、清人様がじっと見られているのを感じてぐっと口元に力を入れたよ。
恥ずかしくなって、窓の外を見るふりして背を向けてしまいました。
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