例えβに生まれても

7 帰国の王子様

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ポタリ、ポタリ......

自分の手の甲に落ちた滴に、何が起こったのか最初はわからなくて。
熱く火照った頬に指を伸ばして、初めて泣いている自分に気付いた。

謎過ぎる涙のタイミングに呆けてしまう。
なんで、涙が.....久し振りに声が聞けて、ホッとし過ぎたのかな？
こんなこと、初めてで、怖い。


『.....ル？ハル？
本当に何もされてないんだな？』


されてないよ、と頷いても、スマホ越しには伝わらない。
こんな、急に泣いてるとか、変に思われる。
精一杯声を張って、清人様に答えた。


｢大丈夫ですよ｣

『そうか、なら、良いんだ』


清人様の声からホッと緊張が抜けていく。
うまく、誤魔化せたみたいだ。

それなのに、ホッとした気持ちがモヤモヤに埋め尽くされる。
近くにいたら、どんな俺の小さな変化も見逃さない清人様が気付かない。
気付いて欲しくないのに、気付いて欲しい。

矛盾したジレンマに、また首筋をカリカリ爪で掻いてしまう。