ヘタレαにつかまりまして

22 ヤマ

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｢ヤマ、大丈夫か？｣


手を離すと、ヤマは俺の問いかけに答えず、腿に肘をついて両手で顔を隠し｢ああぁ・・・も、ヤバイ、ヤバイ｣と言いながらフェロモンを抑えることに必死なようだ。
Ωの俺には、いろんな感情をぐちゃぐちゃにかき混ぜたような無茶苦茶なフェロモン。
一体何を示すものなのかまではわからなかったが、溢れてくる勢いに息が詰まりそうになった。

βの運転手も同じなんだろうか。
車窓を全開にしながらミラー越しにヤマを気遣い、フェロモンの流れが途絶えてからも停車したまま様子を伺っている。


｢も・・・カナがあんまり可愛い過ぎて、フェロモンのタガ外れたぁ。
恥ずかしい・・・｣


顔を隠したまま呟くヤマ。
今まで、言葉でも態度でもフェロモンでも可愛いと言われて示されてもきたが。
タガが外れるなんて、異常事態は起きていなかったぞ？
そんなにヤマのコントロールは危うくなっているのか？
ヤマには菊川の敷地外では、かける言葉も選ばなければならないな。


｢やはり、しっかり検査してもらわないと｣

｢・・・カナが不意討ち過ぎるんだよぉ｣


問題無いと判断されたのか、情けない声を出すヤマを乗せてゆっくり自動車は進み出した。
病院の玄関前では、今か今かと到着を待っていた白衣集団が出迎えてくれて。
ヤマは下車した途端に取り囲まれ、検査へ連れていかれてしまう。

俺は医院長室に通され待っている間に、無事着いたことを陽太さんに。
現状報告を桜宮家にそれぞれ連絡。
検査終了後にその旨を両家に連絡し、三枝にも記憶が完全に戻ったことを伝え、三枝から笹部を通じて松野や竹居に連絡するよう頼んだ。