ヘタレαにつかまりまして

三日月

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20 桜宮 side 倭人

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なかなか進まない作業に気落ちしてる桜宮と。
混乱極まる俺。

兄貴と夕飯前に玄関で一緒になった途端、「阿呆にかける言葉はない」と、俺にだけ聞こえるよう調整した溜め息付の舌打ち追加。
その後ろをついて来ていた遥馬さんは、俺達に掛ける言葉が見当たらず口をパクパクしたあとに結局項垂れて。
そんな遥馬さんの様子に、兄貴が「いい加減にしろ」と殺気を孕んだ局地的なフェロモンを容赦なく俺にぶつけてくる。

兄貴は遥馬さんのことになると、針を通す隙間もないくらい心は狭くなる。
遥馬さんには、本気で自分のことしか考えて欲しくと思ってるから、俺の記憶喪失を遥馬さんが心配しているだけでアウト。

勿論、実の弟の記憶喪失より遥馬さんが優先。
いや寧ろ、計画性のあるフェロモンレイプに引っ掛かった時点で「阿呆が過ぎる」と弟枠から切り捨ててるかもしれない。

兄貴の前だと、物騒な指導を考えていた父さんや姉貴の方が優しい反応に思える。
このままだと、遥馬さんの視界に入ることを許されなくなる方が、階段から突き落とされるより確実に早いな・・・

兄貴のフェロモンを受け、急に足取りが重くなった俺に。
桜宮は「大丈夫か?」って心配して優しい言葉をかけてくれる。 
桜宮には、兄貴に何されたか見えてないのに、ちょっとした変化にも気付いてくれる。

食堂で席に着いてからは、父さんがニヤニヤ機嫌良く嗤ってるのは、針のむしろより全然良いんだけど。

いつまでも、記憶を覚えることからは逃げられない。
そう、このときは、記憶力には自信があったから。
割り切ってしまえば、なんとかなると思っていた。
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