ヘタレαにつかまりまして

三日月

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20 桜宮 side 倭人

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「へぇ」


と、しか言えない学園祭について知らない俺に、桜宮は焦らなくてもいいと微笑む。

俺の手には、桜宮がまとめていたノートが一冊。
几帳面に時系列に沿って年表のようにまとめたページと。
エピソードごとに詳細が書かれたページ。
それぞれのエピソードには、松野達のメッセージも加えられている。

短時間に整理し、分かりやすくまとめたノート。
自分だけじゃなく周りのメッセージまで集めて・・・
Ωがこれを会得するまでの努力は、並大抵じゃなかっただろうな。

αやβ、Ωには、埋めることが出来ない溝が確かにある。
顕著足る例は、自らの意思によるフェロモンの操作。
これはαにしか許されていない。
他にも、才能。
各界における頂点は全てα。
努力しても、βはα以上の才覚は出せない。

Ωは更にそのβを抜くことが出来ない。
αの寵愛を得るための努力と命が天秤にかけられていた時代に、Ωの遺伝子は随分退行したらしい。
α家系やβ家系から突如現れるΩも例外じゃない。
生きるために必要な最低限の生活力さえ、弱いΩは持たずに生まれる。

そう、父さんにも聞かされていたし。
Ωがβを偽装するだけでも、相当な努力がいるとも聞いていたから。
αを偽装してきた桜宮の凄さを、このノートからも垣間見えて正直驚いていた。
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