ヘタレαにつかまりまして

三日月

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20 桜宮 side 倭人

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「・・・倭人さん?」


思わず掴んでしまった腕。
翌朝、登校する桜宮を離れで見送るはずが。
車に乗り込むのを止めてしまった・・・

桜宮はビックリ。
あぁ、もう、どうすることも今の俺には出来ないんだから仕方ない。
仕方ないなら、手をほどくしかない。


「んと、気を付けて、いってらっしゃい」


桜宮の周りを覆っていたフェロモン。
時間が経過して、かなり薄くなってしまってる。
朝起きて昨日までなんの不安もなかったのに、桜宮を一人で登校させることがすごく心配になった。

俺の番に手を出すαがいるなんて、あんまり考えられないけれど。
桜宮にこんなフェロモンをつけるくらいだ。
どこかしらで狙われていたのかも。

今の俺には、同じフェロモンを桜宮に上書きできない。
独占欲丸出しのフェロモンから、所有物だと示すフェロモンに切り替えたら狙ってる相手に変に勘ぐられてしまいそうだし。
俺のせいで、桜宮に危険が及ぶ事態は避けたい。
これ以上、悲しませたくない。


「うん、行ってきます」


にっこりと、花開く笑顔で車に乗り込む桜宮。
俺はすぐに部屋に戻り、記憶を失ってから初めて松野達とのグループチャットを更新した。
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