ヘタレαにつかまりまして

三日月

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20 桜宮 side 倭人

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「フェロモンレイプの後遺症については、昨日松野達が来たときにも説明していたが極秘にする。
倭人さんには窮屈な思いをさせるけど、記憶整理が終わるまでは通学はせず、外出は必ず俺の同行を認めてほしい」


承認書を受け取った桜宮は、申し訳なさそうに眉尻を下げた。
明日、桜宮は状況説明や学園祭の事後処理のために一度登校。
明後日からは、俺の無くした記憶の補完作業に付き合ってくれる。

思い出せないなら、体裁を整えるために無くした分の記憶を覚えてみてはどうかと桜宮からまず俺に相談があって。
俺も「ヤマ」には興味があるし、了承。
朝食で桜宮が提案したら「こちらこそよろしく」と母さんも父さんも乗り気で、早速明後日から始めることになった。

「お馬鹿さん」「情けない」と。
姉貴と兄貴には、離れから車に乗り込む直前、両肩を挟まれてボソッと囁かれた。
普段は仲がそれほど良くないのに、こう言うときは気が合いすぎ。


「俺もその方が助かるよ。
急に生徒会の仕事任されてもわからないし」 


気にしてほしくないと含みを持たせたら。
桜宮はふっと肩の力を抜き、苦笑。
さっきまでの固さが崩れて、ふんわりと優しい視線がガラリと雰囲気を変えていた。


「倭人さんなら、わからなくても出来るだろう。
謙遜するな」


そのまま部屋に戻る背中に目を瞬かせる。
なんか、ズルい。
桜宮は、「ヤマ」に向かって見せる顔を不意をついて出してくる。
俺が見たことがない、番になった「ヤマ」に見せている顔。
免疫がないから、戸惑う。
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