ヘタレαにつかまりまして

20 桜宮 side 倭人

17

｢なんだよ、泣きそうな顔して？
フェロモンレイプは未遂なんだろう？｣

｢お見舞いね～かなちゃんもお疲れ様！｣竹居の手から菓子箱は桜宮へ渡る。
｢竹居もお疲れ様｣答える桜宮は笑顔で、二人が親しげなのが不思議だった。
あぁ、ここにも俺の知らない時間があるんだな。


｢無事で良かった。
学園祭については、週明けにはアンケートを纏める。
確認したいことがあるなら先に聞くぞ｣

｢警察に引き渡したら、柏原ぶるぶる震えてたぜ｣


松野も笹部も話しかけてくれるが・・・曖昧にしか笑えない。
春から時間が止まっている俺には、わからない内容だ。


｢もう、めっちゃ心配したんやで？｣


部屋に入ってきたのは笹部が最後だと思っていたのに、その後ろから三枝が続いて入ってきたときには正直困惑。
同じクラスにいた編入生。
幼馴染みの三人や番になっていた桜宮と違い、接点がわからない。

仲良さげに俺に向かって歩いてきた三枝の足が止まった。
俺の違い、異変に気付いて戸惑った表情。
その視線は桜宮へ移った。