ヘタレαにつかまりまして

三日月

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20 桜宮 side 倭人

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意識を取り戻した俺は、家に呼ばれていた掛かり付けの医師から簡単な検査を受け、日常生活には問題無しと診断された。
詳しいことは後日にしましょうと言われ、休むまもなく警察へ。


「ばっっっっっっっっかじゃないの?」


で、警察から帰ってきた途端、額に血管を浮き上がらせた姉貴に、清々しいくらい怒りを隠さず声を荒げて出迎えられた。
記憶を無くしてる弟への配慮は微塵も感じない。


「計画的フェロモンレイプに、引っ掛かるなんて本当に情けないわ。
抜けてるところも可愛いなんて思ってたけど、バカよ、バカ。
どうせ学園祭を可愛い奏ちゃんと楽しめることに浮かれてたんでしょう。
見てなくてもわかるわ」


俺の前を通りすぎ、一緒に警察署に行ってきた桜宮を強引に抱き締めその頭をヨシヨシ。
姉貴が本気で心配しているのは、俺じゃなくて桜宮なんだとその瞳が雄弁に語ってる。

胸の間に桜宮を抱え込み、優しく桜宮を撫でている手つきにも労りが感じられ。
桜宮も照れ臭そうだけど表情が安らいでいる。
二人の間にも、俺が知らない時間が流れているんだな。

時間の枠から弾き出されて、ぼんやりしていた俺を見上げた瞳は限りなく冷たいのに。
桜宮を優しく見守る瞳は、暖かい。
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