ヘタレαにつかまりまして

三日月

文字の大きさ
上 下
451 / 1,039
20 桜宮 side 倭人

8

しおりを挟む
桜宮を初めて認識したのは、小学生に入った年の春。
もっと前から、α良家の同世代の子息子女を集めた交流パーティのメンバーとして出会っていたはずだけど。
桜宮と他のαを区別してはいなかった。

認識したのは、桜宮が他のαとそのとき違っていたから。
他のαが親から離れて、じゃれる遊びの延長でα同士のマウンティング、格付けフェロモンを出していたのを。
桜宮は壁際で、母親の後ろから一歩も動かず。
関心すら持っていない瞳でそれを眺めていたのを覚えてる。

俺以外にも、マウンティングに興味がないαがいるのは新鮮だった。
本気を出せば、すぐに掌握出来てしまうことをこのときの俺は知っていたから。
既に、他のαとの違いをこのとき自覚していたから。

でも、同じ理由では無さそうだな。

興味津々で早速近寄ると、無言で穴が開くんじゃないかと思うくらい空色の瞳で見つめられた。
気が強そうなのに、少し脆そうな男の子。
そんな印象だった。

同じ瞳を持った母親が、無言の桜宮に苦笑して「せっかく来てくれたのにごめんなさい」と申し訳なさそうに謝ってくれた。

自分のフェロモンを一切表に出さずに、両親の愛情が注がれたフェロモンを纏っているのは、まだ小さいその頃なら別段珍しいことじゃなかった。
謝っている母親の背に隠れてしまったから、人見知りや引っ込み思案なのかと思ってそれからあまり近寄らないようにした。

それからしばらくは、住んでる地区が違うから小学校は別だったし。
桜宮と会うのはパーティのとき限定。
でも、パーティの間、俺は松野や竹居、笹部と行動してたし。
桜宮は相変わらず壁際に居続けたから全然接点は無かった。

ちょっと近づいたのは、中高一貫教育の茅野学園に入ったとき。
中学に入って親のフェロモンを外さないαは悪目立ちする。
案の定、桜宮は他のαから目をつけられていた。

笹部が面白いαがいると、入学早々親離れできない桜宮にかなちゃんとあだ名をつけていたが。
笹部はからかいはしても、無闇なことはしないし。
桜宮自身も、親のフェロモンを纏い続けているのは事実だからからかいを強く否定もしていなかった。
しおりを挟む
感想 205

あなたにおすすめの小説

恋愛対象

すずかけあおい
BL
俺は周助が好き。でも周助が好きなのは俺じゃない。 攻めに片想いする受けの話です。ハッピーエンドです。 〔攻め〕周助(しゅうすけ) 〔受け〕理津(りつ)

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。 1日2話ずつ投稿します。

白い部屋で愛を囁いて

氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。 シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。 ※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

上手に啼いて

紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。 ■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

処理中です...