ヘタレαにつかまりまして

三日月

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9 特別棟

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流石に、飛鳥さんでさえ触らなかったうなじを目の前で触られてヤマもキレたんだろう。
自分が刻んだ証を他人に触らせるだけで、Ωに非はなくても番を解除するプライドが高いαもいる。
一瞬、腕を払い蹴飛ばして床に倒してやろうかと思ったが止めておいた。

俺とヤマの場合は、家も絡んだ契約だから解除はされる心配はない。
しかも、相手はヤマの幼馴染みだからな。
偽装αだった時のように抵抗する方が、身のほどを弁えないΩ、番を制御出来ないαとして二人の評価を下げる可能性がある。

手慣れた幼馴染みの連携に、ヤマを正気に戻す手はあるんだろうとひとまずは安心も出来たしな。
俺はヤマの身体に回していた腕をほどいて、ヤマを羽交い締めしている松野に期待を込めて尋ねた。


「早く倭人さんを何とかしてくれ」

「無理」


・・・・・はぁ?!


「菊川が潜在的に力を持ってるのは知っていたが、こんなことしでかしたの初めてだから。
俺達以外、身体だけじゃなく意識も止まってるし」


竹居まで、固まっている三枝の顔の前で手を動かし、「菊川、やるなぁ~、コレ完全犯罪狙ってた?」と笑いながらすっかり落ち込んでいる笹部に止めを指している。
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