ヘタレαにつかまりまして

三日月

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「ところで・・・桜宮さんに聞かせていい話か迷うとこだけど、澪には家族以外ののαと二人きりになるなと言われてる。
桜宮さんには悪いんだけど・・・」

「大丈夫です、立ち会いますよ。
すぐに忘れることにしますから」


よっぽど聞いておきたいことがあるんだろう。
頭を掻いてる陽太さんは、しかめつら。
萩野は、「さぁどうぞお聞きください」と両手を広げて見せている。

この態度、何聞かれるか、もう分かってるんだな。
雇用主である桜宮家の人間以外には、いつも萩野はこんな調子。
小馬鹿にしてるのを隠さない。


「萩野の坊っちゃん、由良(ゆら)はあれからどうなったんだ?」


軽い口調に反し、陽太さんの顔は真剣。
筋肉が強ばり、緊張しているのが俺にもわかる。
萩野の表情や動作を注意深く観察し、答えの真偽を炙り出そうと見つめる。

対して萩野の姿勢は変わらない。
目を細め、口角を上げたまま、陽太さんに対峙する。


「坊っちゃんなんて止めてくださいよ。
縁切りしましたし、坊っちゃんなんて年じゃありませんよ。
知らない仲じゃありませんし、雇用主ではありませんが萩野とお呼びいただいて構いませんよ。
俺は、雇用主の取引先ですから、建前だけでも陽太様とお呼びしましょうか?」


聞かれたことには一切答えず、萩野は苛立つ陽太さんに向かって清々しいまでの作り笑い。
本当に、人が悪い。
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