ヘタレαにつかまりまして

5 都市伝説 side 倭人

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｢｢｢本当に、申し訳無いっ｣｣｣

｢あの、俺は、大丈夫ですから頭上げて下さい｣


二人掛けソファーに横たわり、力無く笑う桜宮に、膝につくくらい深く頭を下げる俺。
二人とも、バスローブを羽織る軽装。
俺の後ろでは、スーツ姿の姉貴と母さんが一緒に頭を下げていて、桜宮の後ろでは長袖シャツに麻の緩いパンツを着たラフな格好の父さんがα三人組を冷やかな目で映している。

更にその周りは、使い物にならなくなったベットを交換したり、散らかしっぱなしの部屋の片付けに使用人がフル活動中。
バタバタ、ゴトゴト騒がしい。

桜宮本人にも、桜宮家からも、なにされたっておかしくないことを俺が皆を巻き込んでしてしまった。
こんなことじゃ足りない、許されないとわかっているのに。

頭を上げて桜宮と目が合うと、頬を染め照れ笑いで答えてくれて俺まで照れ笑い。
すぐに後ろの父さんから睨まれ、慌てて顔を引き締めごまかし、そんな俺を見てまた笑う桜宮が。

可愛い。

同級生の桜宮　奏。
多分αを集めたパーティ含めたら、歩き始めた頃から知ってるはずだし、今年は同じクラスで机の並びも真後ろ。
見知った相手、のはずなのに全然印象が違ってる。

いつも親のαフェロモンが身体から離れず、よくちゃん付けでからかわれていた劣等α。
β並みに授業も真面目に聞いているから、よっぽど能力が低いのかとは思っていたけど。
桜宮のノートをとる音が、前に座る俺には心地よくてこの四月からは授業中の眠りが深かった。
　
劣等αでも、αはαと認識して。
俺がクラス内の争いを無くすために、マウンティングのプレッシャーをかけてたけど完全無視だった。
変わってるヤツくらしいか思ってなかったのに。
Ωだから、αに合わせた格付けフェロモンを認識できてなかったんだな。

あの日の夕方、使用人が警戒に当たっていた部屋の鍵を壊し、姉貴の相手が桜宮とわかったときはしばらく頭が働かなかったっけ。
あの日からまだ一ヶ月も経ってないのに、随分昔のことみたいだ。