ヘタレαにつかまりまして

三日月

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コイツは、誰かと勘違いしてるとかじゃないのか?
これがこうなるまでだったなら、今まで歯牙にもかけなかったくせにと、長年の鬱積した気持ちが菊川にイヤミの1つも投げたいところなんだが。
番になった実感、理屈は分かっていても菊川に抱く感情への戸惑いがごちゃ混ぜで何かを言い返すことも出来ない。
必死に努力しても届かないαだと目の敵にしてきたあの菊川に、甘い声で可愛いと何度も告げられるとか⋯なんでこんなことになっているんだろう。

考えようと思っても、二人を囲む菊川のフェロモンが呼応するように「桜宮、可愛い」「俺の番は可愛い」と渦巻き身体に絡みついてくる。
フェロモンは嘘をつかない。
本当に⋯本当にコイツはこの俺を可愛いと認識してるのか?

ここには、飛鳥さんと契約上の番になるために来たんだ。
それなのに、こんな、そう、こんな裸で制服姿の菊川に背後から抱き締めれまだ繋がって⋯⋯⋯うわぁぁあ、もう、ダメだっ
キャパ越えで耐えられないっ

後孔を初めて貫いた、硬度を保ったままのペニスの存在ももちろん頭から離れてはくれないし、物理的にも無くならない。

いや、無くせば良いんだ!


「番が成立したなら、も、抜けよっ」


そうだっ
まずは、離れよう!
菊川から距離をとろう!
番が成立したせいで、相手のフェロモンに引きずられてしまっているんだ。
番になったΩは、三ヶ月に一度の発情期から開放される代わりに、相手が求めたときに発情フェロモンを放出してそれに応じるようになる。

菊川の牙が引っ込んでないと言うことは、俺を、も、求めていると言うことで。
額を打ち付けた痛みで、応じようとする感度は若干鈍くなっているようだがどうしたって綺麗に消えてはくれない。
番になっているんだからな。

ここは、うん、そうだな。
風呂場を借りて、一人でゆっくり整理しよう。
うん、そうしよう。

俺は落ち着きを取り戻していた。
と、思い込もうとしていた。
ドクドクと高鳴り出した鼓動も、ジワリと上がっていく体温も、ジクジク身体が疼きだしているのも、きっと勘違いだ。
菊川も俺の発情フェロモンで強制的にあんなことになってしまったが、多分というか確実に何度も受け止めて菊川は俺の中で果てているはず。
足を伝う生温い滴りがその証拠だ。
だから、そう、落ち着いているはずだ。

それなのに。


「え、無理」


あっさりと軽い口調で菊川は拒否。
スンスンと、汗まみれの頭を嗅がれてつい怒鳴りつけてしまった。


「バカ菊川、ふざけんなっ
何が、無理だっ
お前がこの手を離して、退けば良いだけだろっ」
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