ヘタレαにつかまりまして

三日月

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4 予想外

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これ以上奥まで来られては堪らないと、自由になった両手で菊川の腕にしがみつく。
懸垂の要領で身体を持ち上げてみようかとも思ったんだが、あちこち痛みが走って諦めた。

足、閉じれない。
尻、なんか、いる。
腹、ヤバイ。

ほんの少し身体に力を入れただけでも、自分の内部から菊川の圧倒的な存在感がヒシヒシ伝わって来てどうしようもない。
恐る恐る、菊川の腕越しに自分の身体を見下ろせばドロドロに濡れて噛まれて吸われて彩りが追加された酷い有り様が確認出来た。
そして、ココに菊川を収めているのだと言う実感まで湧いてきて、目の錯覚なんだろうが、腹がいつもよりふっくら膨らみ、そこが脈打っているようにさえ見えてくる。

マダ、ハイッテル

自分から求めたことのはずが、あまりにも生々しい感触と体勢にすっかり狼狽えていた。
自分の柔らかくて薄い茂みの合間から垂れ下がる赤く腫れたペニス。
その先から、栓が壊れた蛇口のようにポタポタ滴が滴り、敏感になっている先端が震えているのまで見えてしまった。


「な、なんでこんなことに⋯」


途方にくれて無意識に溢れた言葉。
ピッタリと身を寄せていた菊川にも聞こえていたらしく、律儀に理由を教えられる。


「ずっと、桜宮、噛めって」


お、俺かっ

あーぅー、全く身に覚えは無い。
無い、んだが。

ついでのようにカプリと軽く耳朶に牙を当てられ、なんとも言えない充足感を得てしまい納得はすぐに出来た。
αが牙を出すのは、相手への所有欲が一番大きい。
敵対心からの屈服を強いるものもあるが、Ω相手なら自分のものにしたいという独占欲が混じる。
番に求められて喜ばないΩはいない。

俺自身は、菊川に全くそんな気持ちを沸く要素は無かったはずなんだが。
⋯牙を当てられた瞬間、価値観がひっくり返ったように嬉しくて微笑んでいた。
自分の中に芽生えた番への気持ちに困惑してしまう。

そんな俺には全く気付かず、菊川はぽつりぽつり言葉を続けた。
息がかからないよう、俺の肩に顎を載せてくれたけど。
その動きに合わせて聞こえた、意識していなければ聞き逃すくらいのわずかなくちゅくちゅ音とそこから生まれるむず痒い快感を拾ってしまい、俺は羞恥で身を染める。
うわぁ、もう、どうしたら良いんだっ


「桜宮、可愛い、可愛い。
俺の、番、可愛い」


うわぁぁぁぁあああっ

さっきの、言葉、聞き間違いじゃなかったのかーっ
顔を見なくてもわかるっ
絶対、コイツ、いつものぼんやりした顔で喋ってる!
お花畑満開な台詞を、なんのためらいもなく普通に話せてしまってる!
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