46 / 1,039
4 予想外
7
しおりを挟む
ドサッ
崩れ落ちた身体は、絨毯が敷かれた床より先に菊川の両腕に抱き止められていた。
咄嗟に身体が動いたらしく、一瞬目があったその顔はしまったと悔いていた。
ギリギリの縁で発情フェロモンに堪えていたαが、その根源のΩに近付くなんて自殺行為だ。
菊川は抱えた俺ごと後ろに倒れ、先程の躊躇など無かったように荒々しい動きで胸に閉じ込める。
「ぁ、もぅ⋯⋯」
捕らえたΩを離すまいとする本能。
俺の肩口に鼻を埋め、俺を抱き締めた腕がブルブル興奮に震えている。
菊川の呟きは、発情フェロモンに耐えられないと観念したのか弱々しく掠れていた。
俺は、家族や萩野以外を除く人間に、ここまで接近を許したことが無かった。
その誰とも違う、同世代αの、俺を求める熱を帯びた腕の中。
押し付けられた胸元から、菊川の体臭とフェロモンが香る。
発情したΩを前に、征服欲求で引き出された制圧フェロモンが昂ぶりバクバク菊川の心臓が鋼のように響いていた。
俺のこの渇望を満たせる、従うべき相手の腕の中にいる。
菊川の息を吐くごとに荒くなる呼吸に、自分の呼吸も重なる。
全身の血流が沸騰して破裂しそうだ。
伸びた牙が首筋をかすめ、そこからビリビリ電撃が走る。
思わず口から喜悦の声が漏れ、これからの期待に俺の鼓動もドクドク速度を増していた。
「ああぁ⋯ッ、菊川ぁ⋯⋯んんっ」
座り込んだ菊川の背に腕を伸ばし、上下する胸板に顔を擦り付けた。
大きく吸い込んだ肺の隅々まで行き渡る、αの、菊川の制圧フェロモン。
菊川の体臭。
相手をひれ伏せるαの制圧フェロモンは、Ωの発情フェロモンの前では質を変える。
服従を強要する力が、発情Ωを前にすればその身体を差し出せと求める力に変わっていく。
それを受け、早く支配して欲しいと俺の全身が求めを乞う。
もっと、もっと、菊川を感じたい。
あぁ、早く、その牙をこの首に刻んで俺の番になってくれ。
お前を求め、渇望してうずくこの穴を埋めてくれ。
自分の内側から湧き出る発情フェロモンに取り憑かれ。
自分のことにばかりに気を取られ。
俺は完全に、菊川の変化を見逃していた。
崩れ落ちた身体は、絨毯が敷かれた床より先に菊川の両腕に抱き止められていた。
咄嗟に身体が動いたらしく、一瞬目があったその顔はしまったと悔いていた。
ギリギリの縁で発情フェロモンに堪えていたαが、その根源のΩに近付くなんて自殺行為だ。
菊川は抱えた俺ごと後ろに倒れ、先程の躊躇など無かったように荒々しい動きで胸に閉じ込める。
「ぁ、もぅ⋯⋯」
捕らえたΩを離すまいとする本能。
俺の肩口に鼻を埋め、俺を抱き締めた腕がブルブル興奮に震えている。
菊川の呟きは、発情フェロモンに耐えられないと観念したのか弱々しく掠れていた。
俺は、家族や萩野以外を除く人間に、ここまで接近を許したことが無かった。
その誰とも違う、同世代αの、俺を求める熱を帯びた腕の中。
押し付けられた胸元から、菊川の体臭とフェロモンが香る。
発情したΩを前に、征服欲求で引き出された制圧フェロモンが昂ぶりバクバク菊川の心臓が鋼のように響いていた。
俺のこの渇望を満たせる、従うべき相手の腕の中にいる。
菊川の息を吐くごとに荒くなる呼吸に、自分の呼吸も重なる。
全身の血流が沸騰して破裂しそうだ。
伸びた牙が首筋をかすめ、そこからビリビリ電撃が走る。
思わず口から喜悦の声が漏れ、これからの期待に俺の鼓動もドクドク速度を増していた。
「ああぁ⋯ッ、菊川ぁ⋯⋯んんっ」
座り込んだ菊川の背に腕を伸ばし、上下する胸板に顔を擦り付けた。
大きく吸い込んだ肺の隅々まで行き渡る、αの、菊川の制圧フェロモン。
菊川の体臭。
相手をひれ伏せるαの制圧フェロモンは、Ωの発情フェロモンの前では質を変える。
服従を強要する力が、発情Ωを前にすればその身体を差し出せと求める力に変わっていく。
それを受け、早く支配して欲しいと俺の全身が求めを乞う。
もっと、もっと、菊川を感じたい。
あぁ、早く、その牙をこの首に刻んで俺の番になってくれ。
お前を求め、渇望してうずくこの穴を埋めてくれ。
自分の内側から湧き出る発情フェロモンに取り憑かれ。
自分のことにばかりに気を取られ。
俺は完全に、菊川の変化を見逃していた。
27
お気に入りに追加
1,762
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる