ヘタレαにつかまりまして

三日月

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4 予想外

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必死に流されまいと、Ωの発情フェロモンに抗おうとしている菊川。
ギュッと目頭に皺が寄るくらい固く閉じられたその瞼が、俺を気遣いうっすらと開いた。
汗で濡れた前髪が目元に張り付き、そこから覗くのは上気した皮膚に彩られた瞳。
熱を帯びて潤んだそこに宿る獰猛な輝きに、ゴクリ。
無意識に生唾を飲み込んでいた。

上下した喉を抑え、ゾクゾク背筋を走る快感に全身が震える。

軽い眩暈を覚えた、次の瞬間。

暴力的な衝動が、身の内側から突き上げてくる。


「あ、あ、アァぁーーー⋯⋯っ」


組み敷いて、指し貫いてっ
この身体の奥を、グチャグチャに掻き回してっ
揺すって擦って、溢れ落ちるくらいに何度も注いで孕ませてくれっっ
もっと見て⋯その手で触れて、その牙で、この首を噛んでくれっっっ

俺の発情フェロモンが濃度を急激に増し、意識がΩの本能に染まっていく。
噛まれるのも喰われるのもΩのこの狩場で、たった今狩られようとしているのはαの菊川の方だった。
Ωが唯一出すことの出来る発情フェロモンは、番相手を得るために特化した無差別でコントロール不能な諸刃の刃。


「クソッ」


まともに浴びた菊川は、頭を掻きむしり、小刻みに身体を震わせた。
この距離では、発情フェロモンから逃げられない。
あれだけ拒んでいた自分の意志を容易く折られたせいか、一瞬菊川の瞳が悔しげに歪んだように見えた。
けれど、合わさった視線を解くことは出来ない。
菊川の目が、俺から離されることはもう許されない。

αの発情を感知し、標的を得た俺の発情フェロモンの濃度が更に増す。
部屋中に満ちる、噎せるほど重く甘く残酷な香り。
こうなると、標的αの意志は関係ない。
αの身体は、強制的に発情の高み、ノット目掛けて急激に変化する。
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