ヘタレαにつかまりまして

3 お花畑

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｢自分の番になれとお前から迫ってきたくせに、なにビビッてるんだ。
俺相手に勃たないことを心配してるなら、発情フェロモンが出るまで目を閉じとけ。
実践は初めてだが、予習はしてきた｣


まさか、プライドの塊なαに「下手なのか？」とは聞けない。
俺の発情フェロモンが出てしまえば、上手いも下手も関係なく菊川はあてられ俺を襲ってくるから関係なくなるしな。
それほど心配することもないだろう。
発情フェロモンの出ているΩの身体は、αを受け入れやすく変わると聞いているし。

鼻の効く萩野に、そろそろ発情期だからわざわざ身体に負担を強いる即効性の薬は必要ないと言われていたんだが、打ってからどれくらい時間が経ってるんだろう。
効果が出るのが、思ったよりも遅いのだろうか。
もたもたしている間に、菊川と俺の気持ちがブレても困る。
発情フェロモンが出たらすぐに出来るよう、準備だけは済ませておこう。

そう意気込んだものの、さすがに指先が震えてシャツのボタンの上を何度も滑る。
やっと一番上のボタンを外し終え、次に取り掛かろうとしたんだが。


｢待て待てっ、桜宮ぁっ
そんなに急ぐ必要ないだろう。
母さんは俺が説得するし、ちゃんとお互い好きになってから⋯｣


ブンブン目の前で大きく両手を振りながら、真っ赤な顔で一歩一歩下がっていく、とか。
なんのつもりだ？


｢バカ言うな。
家同士の契約だ。
そう簡単に保留に出来るか｣


業務提携の楔として桜宮家と菊川家の互いの子どもを番にするのが前提。
番を断るなら、俺の秘密を口外しない条件で業務提携は成されるが、半端にいづれなりますのでと保留にすることは父さんが認めないだろう。

保留にしている間に他に秘密が漏れたり、万一俺が別のαの番にされれば⋯⋯⋯冗談ではなく、菊川物産は一族含めて桜宮財閥にこの世から消されるぞ。