ヘタレαにつかまりまして

三日月

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3 お花畑

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斬り込むように告げた言葉には、俺の未来を全て託す意味が込められている。
一瞬、その重みに菊川の顔は強張ったが、俺が任せたぞとネクタイを握ったままの拳で胸元を軽く叩いてやるとふわりと緩んだ。
くっきり二重の垂れ目から、緊張の波が引くように消え、穏やかに笑いかけてくる。

それじゃあ、とっとと番になるか。

俺は、思い切りよく自分の決断を即行動に移した。
ネクタイを引き寄せ、ほっと力が抜けた菊川の顔をちょうど良い高さまで落とさせる。
菊川は、俺の上に倒れ込まないよう咄嗟に両手を俺の頭を挟むように壁についた。


「おい、あぶな、んん?!」


降りてくる顔に狙いを定め、油断しきった唇に自分のそれを重ねた。
冷たいけど柔らかな感触。
初めてのキスは、お互い目を開けたまま。
力加減を誤り、コツンと歯が触れた直後に菊川が背中を仰け反らせてすぐに終わった。

ん、結構平気なもんだな。
ふにふにと唇の感触を指で確かめる。
まさか、コイツとこんな関係になるとはという感慨はあっても嫌悪感は無くあっさりしていた。
俺のコンプレックスを著しく刺激する優生α。
お前の一挙手一投足に苛立ち、目の敵にしていたのに。


「な、何するんだよっ」

「それは、こっちのセリフだ」


こっちが覚悟を決めたのに、なんで離れる。
しかも、首まで真っ赤にして狼狽えるなよ。
こっちまで変に意識してしまうじゃないか。
これは、番になるために必要なことだと念入りに自分に言い聞かせている間も、目の前の菊川は唇を押さえてあたふた。
俺と目線すら合わせ無いとか、初めてか!

ん⋯まさか初めて、とか?
頭を過りそこねて滞留した予想を、いやいや、そんなワケがないとすぐに頭から追い出す。
どのバース性よりも優位な位置にあるα女子。
告白は、互いの家も気持ちも多少絡むから断ることは出来る。
だが、セックスのお誘いは納得の行く理由、俺の場合は格上αの両親のフェロモンが妨害して近づけないからになるが、それが無ければ断れない。
コイツに特定の相手がいる話は聞いたことが無いし、茅野学園高等部の中で優生αのトップクラスを放っておくほどα女子は間抜けじゃない。

まさか、めちゃくちゃ下手とか?
そんなところか?


なんか、不安になってきたぞ。
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