ヘタレαにつかまりまして

3 お花畑

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俺を軽々肩に担いだまま、廊下を走り階段を駈け上がる菊川。
俺が背中越しに喚いても止まる気配がない。
バース性の違いもあって体格差はあるが、だ。
ここまで荷物扱いされると腹が立つな。
降ろせと抵抗しようにも、こんな体勢で階段途中に落とされたら受け身を取る自信がない。

せめて同意していないことはわからせようと、握った拳で背中をドンドンと叩く。


｢いてっ、桜宮、痛いって。
頼むから部屋に着くまでおとなしくしてくれよ。
落として怪我させたくないんだって｣

｢おとなしくしてやるから、飛鳥さんの前まで連れていけっ
俺は、飛鳥さんの番になるために来たんだっ
何が悪いようにはしないだっ
十分最悪だっ｣

｢今更連れていっても、姉貴は桜宮を番にはしない。
それに⋯｣


扉の前で止まった菊川は、俺を担ぎ直してノブに手をかけ中へ入った。
どうやら、ここが菊川の自室らしい。
扉に内鍵は無いし、ここまでのルートは覚えている。
隙をついて、飛鳥さんのところに行かないと。
行って番にしてもらわないと。

桜宮家にΩとして生まれた俺を思って、この日のためにどれだけ親族が尽力してくれたか。
αのフリをしなくて良いと言われた日から、気持ちを切り替えてこの日を受け入れるまで俺がどれだけ努力してきたか。

優生αに生まれたお前なんぞにはわからないだろうがな。