ヘタレαにつかまりまして

三日月

文字の大きさ
上 下
19 / 1,039
2 幸せにしたい side 倭人

8

しおりを挟む
家を出るのが遅れはしたけど、遅刻は免れた。
滑り込んだ教室で、席にたどり着く前に進路を妨害し、断っても断ってもしつこく付き合ってくれと迫ってくる女子生徒を適当にあしらう。
面と向かって迫ってくるのは、姉貴と同じく気位が高くて自信満々で断られるなんて思いもしないα女子だ。
自分で生むことも孕ませることと出来るα女子は、自分に選ばれたことを光栄に思えと言わんばかりの態度だから正直うんざりだ。

朝から姉貴の番の話を聞いたから、多少その断り文句が乱暴になっていたんだろう。
幼馴染みからは、何かあったのかと心配されたけど何もないと答えるに留めた。

テスト返却が中心の授業を、聞き流し。
俺に何が出来るのかを、うつらうつら考える。

Ωの父さんに育てられたからか、Ωや番のことを割り切って、切り捨てて考えるのは苦手だ。
相手がいくら望んでいても、愛されない番が作られるのを黙ってみていたくない。

皆が皆、幸せになる社会なんてないし。
どこかに歪が生まれることは、知っている。

でも、だからこそ。
せめて、自分の周りは幸せにしたい。

あのときの姉貴の姿が脳裏にチラつく。
好きな相手を、小さな俺に話してくれた姉貴の声。
その想いごと、心中するような口ぶりだった。
時間が経っても、番になったΩを愛せるようになるとは俺には思えない。

俺に出来ることって、なんだろう。
しおりを挟む
感想 205

あなたにおすすめの小説

恋愛対象

すずかけあおい
BL
俺は周助が好き。でも周助が好きなのは俺じゃない。 攻めに片想いする受けの話です。ハッピーエンドです。 〔攻め〕周助(しゅうすけ) 〔受け〕理津(りつ)

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。 1日2話ずつ投稿します。

白い部屋で愛を囁いて

氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。 シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。 ※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

上手に啼いて

紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。 ■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

処理中です...