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2 幸せにしたい side 倭人
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父さんは、兄貴の冷静な分析に納得したようだ。
「まぁ⋯解除は確かにさせないだろうな。
飛鳥に、今は好きな相手はいないんだっけ?
澪には、その番相手を好きになれば問題ないって押し切られたんだ。
番同士の身体の結びつきから始めれば良いってな。
まぁ、確かにそんなこともあるからな。
飛鳥がその相手を好きになれば」
「え、でも、姉貴には好⋯イッ!」
机の下で、突然足の脛を蹴られ悲鳴を呑み込む。
蹴った相手、兄貴を睨めば、「アホか。黙れ。蹴り殺すぞ」突き刺さる視線に白旗。
相手を押さえ込む攻撃的なαフェロモンをガツンと頭に叩き込まれ、意識が飛びかけた。
いつもおかしな格好で、遥馬さんの前では甘過ぎるか独占欲丸出しなフェロモンしか出さない優しいαを気取っていても、兄貴の俺様α気質は健在だ。
理由は言わずに結果だけ押し付けられる。
「ん?
なんか言ったか、倭人?」
「な、なんでも⋯ナイ」
まだ痛む脛をさすりながら、全然気付いてない父さんに応える。
一瞬の威嚇で、俺の全てを制圧してくる兄貴のフェロモン。
コントロールも完璧で、的以外の周囲には微塵も発生さえ気取らせない。
濃厚な一点集中のフェロモンにやられた相手は、自分は敗者なんだと叩きのめされ暫く息を吸うのも辛く感じるのにな。
ハァと内心での溜息に留める。
「ハル、もういいのか?」
「うん、十分いただいたよ」
「もう少し食べた方がいいんじゃないか?」
「これ以上食べたら、動けなくなるよ」
「俺が運ぶから問題ない」
「そ、そんなことさせられないよ!」
隣では、何事もなかったかのようにイチャイチャしだす二人。
兄貴は、弱らせた俺には目もくれない。
見えているのは、自分の番、遥馬さんだけ。
⋯そう、番は本来こうあるべきだ。
αだって、一人のΩに全部を捧げる覚悟が無いと。
好きな相手がいる姉貴には、こんなふうに相手を想うなんて無理だろう。
形ばかりの番は、不幸なΩを作ってしまう。
父さんに聞かされた、身勝手なαに振り回される不幸なΩの一人になってしまう。
「倭人、もうそろそろ行かないと遅刻じゃないのか?」
「⋯はい、行ってきます」
父さんに促され、気合を入れて立ち上がる。
朝から制圧フェロモンって、きつすぎる。
他人には我関せずの兄貴にそこまでさせるってことは、姉貴に好きな相手がいることを父さんには知られちゃいけないことなのか。
それなら、どうすれば⋯⋯
すぐに解決策が思い浮かばず、重い足取りで学校へと向かった。
「まぁ⋯解除は確かにさせないだろうな。
飛鳥に、今は好きな相手はいないんだっけ?
澪には、その番相手を好きになれば問題ないって押し切られたんだ。
番同士の身体の結びつきから始めれば良いってな。
まぁ、確かにそんなこともあるからな。
飛鳥がその相手を好きになれば」
「え、でも、姉貴には好⋯イッ!」
机の下で、突然足の脛を蹴られ悲鳴を呑み込む。
蹴った相手、兄貴を睨めば、「アホか。黙れ。蹴り殺すぞ」突き刺さる視線に白旗。
相手を押さえ込む攻撃的なαフェロモンをガツンと頭に叩き込まれ、意識が飛びかけた。
いつもおかしな格好で、遥馬さんの前では甘過ぎるか独占欲丸出しなフェロモンしか出さない優しいαを気取っていても、兄貴の俺様α気質は健在だ。
理由は言わずに結果だけ押し付けられる。
「ん?
なんか言ったか、倭人?」
「な、なんでも⋯ナイ」
まだ痛む脛をさすりながら、全然気付いてない父さんに応える。
一瞬の威嚇で、俺の全てを制圧してくる兄貴のフェロモン。
コントロールも完璧で、的以外の周囲には微塵も発生さえ気取らせない。
濃厚な一点集中のフェロモンにやられた相手は、自分は敗者なんだと叩きのめされ暫く息を吸うのも辛く感じるのにな。
ハァと内心での溜息に留める。
「ハル、もういいのか?」
「うん、十分いただいたよ」
「もう少し食べた方がいいんじゃないか?」
「これ以上食べたら、動けなくなるよ」
「俺が運ぶから問題ない」
「そ、そんなことさせられないよ!」
隣では、何事もなかったかのようにイチャイチャしだす二人。
兄貴は、弱らせた俺には目もくれない。
見えているのは、自分の番、遥馬さんだけ。
⋯そう、番は本来こうあるべきだ。
αだって、一人のΩに全部を捧げる覚悟が無いと。
好きな相手がいる姉貴には、こんなふうに相手を想うなんて無理だろう。
形ばかりの番は、不幸なΩを作ってしまう。
父さんに聞かされた、身勝手なαに振り回される不幸なΩの一人になってしまう。
「倭人、もうそろそろ行かないと遅刻じゃないのか?」
「⋯はい、行ってきます」
父さんに促され、気合を入れて立ち上がる。
朝から制圧フェロモンって、きつすぎる。
他人には我関せずの兄貴にそこまでさせるってことは、姉貴に好きな相手がいることを父さんには知られちゃいけないことなのか。
それなら、どうすれば⋯⋯
すぐに解決策が思い浮かばず、重い足取りで学校へと向かった。
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