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2 幸せにしたい side 倭人
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目がくりくりした垂れ目のせいか、アラフィフなのに30代で通る父さん。
姉貴や兄貴が隣に並ぶと、αとΩのバース性の違いもあるんだろうけど貫禄負けしてとても親には見えない。
母さんとは真逆のポーカーフェイスとは無縁の人。
普段は笑ってることが多いのに、今は機嫌がとても悪いと眉間のシワが薄れない。
こんな顔は母さんほどじゃ無いけど珍しい。
あまり怒りが持続しない人なのにな。
光によっては、紫色に見える黒目がちの瞳で母さんを睨みつけ、Tシャツにジーパンのラフな格好で片膝を立てているのを改める気持ちは欠片もないみたいだ。
状態をキープしたままわざと音をたてて紅茶を飲み始めた。
いつもなら、マナーが悪いとやんわり注意する母さんなのに何も言わない。
よっぽどのことが今日はあるみたいだ。
母さんがナフキンで口元を拭うと、察した使用人が即引きに来た椅子から立ち上がる。
「ご馳走様、皆もゆっくりしすぎないように。
⋯倭人、今日は19時以降に帰ってくるようにしなさい」
切れ長の瞳で、座っていた家族を順になぞり、最後に目が合った俺を見て思い出したように付け加えた。
有無を言わせない口調には慣れているし、家族という群れのリーダーは母さんだ。
特に異論がないことなら、従うのが当たり前。
「ハイ」
機嫌が良いままなら、良いままでいて欲しい。
俺は軽く頷き了承した。
それに満足し母さんも軽く頷く。
そして、まだ食べている途中の姉貴の椅子の背を軽く叩いた。
「飛鳥、一緒に会社に行きますよ」
「⋯ハイ」
溜息をつきながら、飲んでいたティーカップを戻す姉貴。
父さん譲りの思い切りの良い性格と、母さんよりもα女性らしいプライドの高さと自分への投資に余念がない菊川物産営業部長。
小さい頃から兄貴も巻き込んでモデルもしていてかなりモテる。
兄貴相手に怒っているときでさえ微笑みを絶やさない好戦的な性格だし、体調が悪くても他人には隠す人なのに。
顔、青ざめたままでここにいるってことは調子がかなり悪い、とか⋯?
声を掛けるべきか迷っている間に、二人は連れ添って部屋を出ていった。
その途端。
「あ”-------------っ」
父さんが絶叫。
勢いよく下ろした足で、さっきまで母さんの座っていた椅子を蹴飛ばした。
アンティークの樫の木製の椅子は、一客だけで百万近い歴代引き継がれてきたものだ。
かなり重厚だから、父さんの細い足で蹴っても斜めにちょろっと移動する程度。
そんなことしたら、足の方が痛いと思うけどな。
直情型の父さんは、冷静沈着な母さんに飽きもせずすぐに噛み付く。
今日は珍しく本人の前では抑えていたけど、抑え切るには難しい何かがあったようだ。
姉貴や兄貴が隣に並ぶと、αとΩのバース性の違いもあるんだろうけど貫禄負けしてとても親には見えない。
母さんとは真逆のポーカーフェイスとは無縁の人。
普段は笑ってることが多いのに、今は機嫌がとても悪いと眉間のシワが薄れない。
こんな顔は母さんほどじゃ無いけど珍しい。
あまり怒りが持続しない人なのにな。
光によっては、紫色に見える黒目がちの瞳で母さんを睨みつけ、Tシャツにジーパンのラフな格好で片膝を立てているのを改める気持ちは欠片もないみたいだ。
状態をキープしたままわざと音をたてて紅茶を飲み始めた。
いつもなら、マナーが悪いとやんわり注意する母さんなのに何も言わない。
よっぽどのことが今日はあるみたいだ。
母さんがナフキンで口元を拭うと、察した使用人が即引きに来た椅子から立ち上がる。
「ご馳走様、皆もゆっくりしすぎないように。
⋯倭人、今日は19時以降に帰ってくるようにしなさい」
切れ長の瞳で、座っていた家族を順になぞり、最後に目が合った俺を見て思い出したように付け加えた。
有無を言わせない口調には慣れているし、家族という群れのリーダーは母さんだ。
特に異論がないことなら、従うのが当たり前。
「ハイ」
機嫌が良いままなら、良いままでいて欲しい。
俺は軽く頷き了承した。
それに満足し母さんも軽く頷く。
そして、まだ食べている途中の姉貴の椅子の背を軽く叩いた。
「飛鳥、一緒に会社に行きますよ」
「⋯ハイ」
溜息をつきながら、飲んでいたティーカップを戻す姉貴。
父さん譲りの思い切りの良い性格と、母さんよりもα女性らしいプライドの高さと自分への投資に余念がない菊川物産営業部長。
小さい頃から兄貴も巻き込んでモデルもしていてかなりモテる。
兄貴相手に怒っているときでさえ微笑みを絶やさない好戦的な性格だし、体調が悪くても他人には隠す人なのに。
顔、青ざめたままでここにいるってことは調子がかなり悪い、とか⋯?
声を掛けるべきか迷っている間に、二人は連れ添って部屋を出ていった。
その途端。
「あ”-------------っ」
父さんが絶叫。
勢いよく下ろした足で、さっきまで母さんの座っていた椅子を蹴飛ばした。
アンティークの樫の木製の椅子は、一客だけで百万近い歴代引き継がれてきたものだ。
かなり重厚だから、父さんの細い足で蹴っても斜めにちょろっと移動する程度。
そんなことしたら、足の方が痛いと思うけどな。
直情型の父さんは、冷静沈着な母さんに飽きもせずすぐに噛み付く。
今日は珍しく本人の前では抑えていたけど、抑え切るには難しい何かがあったようだ。
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