ヘタレαにつかまりまして

三日月

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1 また、明日

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あぁ、だが。

ふーっと、誰にも気取られないようにゆっくりと息を吐いて肩の力を抜いた。
こんな生活とは今日でお別れだ。
俺がここに来ることは、二度とない。
偽りの殻を被るのも今日が最後だ。

この目障りな背中を見ることも、追うことも無い。

原則、この国では他人がαβΩのどの性に属するか、探ることも口にすることもタブーだ。
過去、バース性が明らかになったことで自殺や他殺を招く事態が多発していたらしい。

この管理された学園内部でもそれは同じ。
三枝のように、自分で公言する人間は大抵β。
αは、勉学にも運動にも長ける特性からすぐに分かるし、他人から指摘されればあっさりと認める。
Ωだけは、絶対に自分から名乗らないしβであるように振る舞い擬態する。

けれど、βの影に潜み続けるには限界がある。
Ωの発情期が、十代後半にやってくるからだ。
発情期を抑制剤でやり過ごすより、同級生のαをフェロモンレイプして罪人になるリスクや、Ω性が発覚したときに周りから嬲られてもおかしくない危うさを回避する。

発情期がくれば強制番(つがい)防止の首輪、番避けをつけ、Ω専用通信教育の学校へひっそり転校するか。
さっさと番を作って、αに守られて通い続けるか。

その二択のどちらかを選ぶしかない。

そして、俺は、Ωだ。

しかも、一度発情期が来ているのに番避けを着けずに今日も通学している。
抑制剤で発情フェロモンを相殺し、ギリギリまでβではなく、あえてαらしく振舞いこの場にしがみつく必要があったからだ。

代々α家系の桜宮財閥跡取り。

その立場がそうさせた。
Ωだと世間に知られるのを限界まで引き伸ばした結果だ。
Ωの地位が改善されているとはいえ、性奴隷、αの一部として扱われてきた過去は消せいし世間の意識もΩに対しては冷たい。
本家跡取りの俺がΩだと公表するには、世界が優しくないのだ。

ありがたい事に放り出されて施設送りになることは無く、これまでαを偽装出来るだけの教育を受けてきた。
死ぬまでαとして生きていく覚悟は出来ていたけれど、五年前にα性の弟が生まれてからそれは必要なくなった。

俺は、新しい跡取りを得た桜宮家で行き場を失い、16歳になった今日、この身を他所へ引き渡される。
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