ヘタレαにつかまりまして

三日月

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1 また、明日

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菊川 倭人(きくかわ やまと)。
俺の前に、立ちはだかる障害。

大人しく椅子に座っていれば、俺の視界を遮る広い肩幅と座高があるくせに。
授業中は、ほぼ机に突っ伏し熟睡。
俺の視界に入るのは、なだらかな背中のラインと揺れ動く頭だけ。
教師の声とコイツの寝息の二重奏も聞き飽きた。
俺は授業中もノートをしっかりとまとめ、予習も復習も欠かさないというのに。
教科書は全て学校に置きっぱなし。
授業時間はイコール睡眠時間でしかない菊川を、なぜ一度たりとも越えることが出来ないままなのか⋯

コイツ、いや、取り巻きを含めたコイツらとは学校に入る前から顔見知りではあった。
定期的に設けられる同世代のαが交流する場で、一度は挨拶を交わしているからな。
α至上主義者が多い交流会で、"あの"菊川家の息子だと卑下されることさえなく、他のαを圧倒していることを父さんから聞かされていたからよっぽど恵まれたαなのだなという認識はあった。

俺がどれだけ努力しても届かないほどだとは思いもしなかったが。

定期的に設けられているとはいえ、交流会は年に一度も無い割合だ。
コイツについては、同じ学校に入学してから知ったことの方が遥かに多い。
周りがいくらその才能を持て囃しても、それに気をよくする態度さえ見せず、αだけじゃなくβにさえ奢るような態度も見せない。
万年寝惚けたゆるい態度を崩さない余裕。
頂点ににいるのが当たり前なのだと見せ付けられているようで、存在自体が俺の勘に障るまでに時間はかからなかった。

しかも、今日でコイツに唯一勝っていた家柄さえも⋯
苛立ちと比例して、手の中で更にテスト用紙が潰れていく。


「⋯煩い」


クラス中に試験用紙が返却され終わっても、未だ目の前で騒ぐコイツラに、毒づいていた。
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