ヘタレαにつかまりまして

三日月

文字の大きさ
上 下
6 / 1,039
1 また、明日

3

しおりを挟む
菊川 倭人(きくかわ やまと)。
俺の前に、立ちはだかる障害。

大人しく椅子に座っていれば、俺の視界を遮る広い肩幅と座高があるくせに。
授業中は、ほぼ机に突っ伏し熟睡。
俺の視界に入るのは、なだらかな背中のラインと揺れ動く頭だけ。
教師の声とコイツの寝息の二重奏も聞き飽きた。
俺は授業中もノートをしっかりとまとめ、予習も復習も欠かさないというのに。
教科書は全て学校に置きっぱなし。
授業時間はイコール睡眠時間でしかない菊川を、なぜ一度たりとも越えることが出来ないままなのか⋯

コイツ、いや、取り巻きを含めたコイツらとは学校に入る前から顔見知りではあった。
定期的に設けられる同世代のαが交流する場で、一度は挨拶を交わしているからな。
α至上主義者が多い交流会で、"あの"菊川家の息子だと卑下されることさえなく、他のαを圧倒していることを父さんから聞かされていたからよっぽど恵まれたαなのだなという認識はあった。

俺がどれだけ努力しても届かないほどだとは思いもしなかったが。

定期的に設けられているとはいえ、交流会は年に一度も無い割合だ。
コイツについては、同じ学校に入学してから知ったことの方が遥かに多い。
周りがいくらその才能を持て囃しても、それに気をよくする態度さえ見せず、αだけじゃなくβにさえ奢るような態度も見せない。
万年寝惚けたゆるい態度を崩さない余裕。
頂点ににいるのが当たり前なのだと見せ付けられているようで、存在自体が俺の勘に障るまでに時間はかからなかった。

しかも、今日でコイツに唯一勝っていた家柄さえも⋯
苛立ちと比例して、手の中で更にテスト用紙が潰れていく。


「⋯煩い」


クラス中に試験用紙が返却され終わっても、未だ目の前で騒ぐコイツラに、毒づいていた。
しおりを挟む
感想 205

あなたにおすすめの小説

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

白い部屋で愛を囁いて

氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。 シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。 ※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

捨てられオメガの幸せは

ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。 幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ

手塚エマ
BL
テオクウィントス帝国では、 アルファ・べータ・オメガ全階層の女性のみが感染する奇病が蔓延。 特効薬も見つからないまま、 国中の女性が死滅する異常事態に陥った。 未婚の皇帝アルベルトも、皇太子となる世継ぎがいない。 にも関わらず、 子供が産めないオメガの少年に恋をした。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

噛痕に思う

阿沙🌷
BL
αのイオに執着されているβのキバは最近、思うことがある。じゃれ合っているとイオが噛み付いてくるのだ。痛む傷跡にどことなく関係もギクシャクしてくる。そんななか、彼の悪癖の理由を知って――。 ✿オメガバースもの掌編二本作。 (『ride』は2021年3月28日に追加します)

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

処理中です...